AI産業戦争 米中覇権に呑まれる日本#11Photo by Reiji Murai,JIJI

米エヌビデイアがけん引するAI(人工知能)半導体市場。米ビッグテックを中心とする需要の増加で大増産が迫られているが、その製造をほぼ1社で担う台湾積体電路製造(TSMC)の生産能力は逼迫している。特集『AI産業戦争 米中覇権に呑まれる日本』の#11では、AI半導体の大増産のチャンスを捉えて商機を獲得した日本企業の動向に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

AI半導体の大増産でTSMCの能力逼迫
チャンス見いだしたレゾナック主導の企業連合

「今年はTSMC(台湾積体電路製造)に一生懸命働いてもらわなければならない。私には大量のウエハーが必要ですから」
 
 1月31日夜、台湾・台北市。米エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、台湾の半導体サプライチェーン企業を招いた夕食会後、集まった記者団を前にこう話した。

 エヌビディアは、新型のGPU(画像処理半導体)「ルービン」を2026年後半に市場投入する計画で、すでに量産を開始している。だが、その製造を一手に受託しているTSMCの生産能力は逼迫している。

「今後10年でTSMCは生産能力を100%以上拡大することでしょう」とフアン氏は冗談めかしていたが、生産能力不足の深刻さは十分に伝わってくる。

 特にAI半導体の生産でボトルネックになっているのが、「CoWoS(コワース)」と呼ばれるTSMC独自の先進パッケージング(封止)技術だ。TSMCはCoWoSの生産能力を段階的に拡張しているが、それでも供給が追い付かない状況が続く。

 追い打ちをかけるのが、AI半導体の高性能化に伴うチップサイズの「大型化」だ。ウエハー1枚当たりの「取れ高」が減る見通しになったことで、TSMCは生産プロセスの見直しを迫られている。

 これにチャンスを見いだしたのが、レゾナック・ホールディングスだ。同社の呼び掛けにより、25年9月、半導体材料や製造装置、設計分野における世界トップクラスの日米欧アジアの27社が結集。AI半導体の先進パッケージング技術の開発を推進するコンソーシアム(企業連合)「JOINT(ジョイント)3」が発足した。

 巨大半導体メーカーを相手に交渉力を強化し、AI市場に流れ込む巨額マネーを取り込もうとするレゾナックの戦略は、日本企業が世界のAIサプライチェーンで存在感を示すための、一つのモデルケースとなり得る。

 次ページでは、AI半導体の急拡大に直面するTSMCの先進パッケージングの課題を整理するとともに、サプライチェーンの中でレゾナックが確保した「絶対優位」のポジションに迫る。