プロジェクトの最中、「目的から少しズレている気がする」と感じても、「今指摘したら空気が悪くなるかも」と意見を飲み込んでしまうことはないだろうか。しかし、サンダンス映画祭でグランプリを受賞した映画監督・長久允氏は、その配慮こそがプロジェクトを停滞させる要因だと語る。独自のチームビルディング術と思考法を紐解く。※本稿は、長久允『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』の一部を抜粋・編集し、独自インタビューを交えて構成したものです。(文/飯室 佐世子)

脚本の教室Photo: Adobe Stock

「よかれと思って」という配慮の罠

 リーダーやマネージャーにとって、チーム内の不協和音は避けたいもの。

 特に近年は「心理的安全性」という言葉が広まり、メンバーのモチベーションを下げるような指摘や、場の空気を乱すような発言はタブー視される傾向にあります。

 そのため、仕事の進め方やアウトプットに対して違和感を覚えても、「後で個別にフォローしよう」と、その場での指摘を避けてしまうリーダーは少なくありません。

 しかし、その「配慮」は本当にプロジェクトのためになっているのでしょうか

断罪ではなく「歯車を合わせる」

 広告代理店で働きながら、一方で多くのスタッフを束ねて映画を制作する長久監督は、違和感を後回しにすることの危険性を指摘します。

 監督が徹底しているルールは、非常にシンプルです。

「感じたら、すぐ言う」こと。

「すぐ言う」と聞くと、相手を頭ごなしに否定してしまうのではと感じるかもしれません。しかし、長久氏の意図は全く異なります。

長久允:違和感を消すために嘘をつくのがきつくなったので、思ったことを後回しにしないで、すぐ言うようにしていました。ここで重要なのは、言う目的です。相手を断罪するためではありません。

 映画作りもビジネスも、「良いプロジェクトを作る」という共通のゴールを持ったチーム戦です。

 にもかかわらず違和感が生じるのは、ただ単に「お互いの認識がズレている」から。

「ここ、ちょっと違和感があるんだけど」と即座に伝えることは、相手の人格否定ではなく、「歯車が少しズレているから、一緒に直そう」と提案しているにすぎないのです。

 このマインドセットを持てば、「言うべきか、言わざるべきか」という無駄な逡巡は消え去ります。

遠慮というコストを捨て、
最短距離でゴールへ

「すぐ言う」ことは、決して冷たい行為ではありません。
「私たちは同じゴールを目指しているはずだ」という、相手への強い信頼の証であり、プロフェッショナルとしての責任です。

 不要な遠慮というコストを捨て、「ズレたらすぐ合わせる」という軽やかなマインドを持つこと。

 それこそが、最短距離でゴールを目指せる最強のチームを作る第一歩になるかもしれません。

(本稿は、『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』の発売を記念したオリジナル記事です)