結論は明確だ。中国がもっとも警戒しているのは「価格上昇が経済全体に波及すること」である。
安価に輸入した原油を国内で精製し、それを再輸出して利益を得る――本来であれば合理的なこの行動すら、中国は抑え込んでいる。国内供給を優先し、物価の安定と長期的なリスク管理を重視しているからだ。
同じ発想は、肥料政策にも表れている。
中東情勢の悪化により、肥料の原料となる天然ガス価格が高騰し、供給不安が広がる中、中国政府は国家備蓄から肥料を放出すると発表した。中国は世界最大級の尿素生産国であり、2026年の生産量は過去最高に達する見込みだが、それでも輸出許可は一件も出していない。インドからの要請すら保留している。
エネルギー価格の上昇は
政権の安定性に直結する
なぜここまで徹底するのか。
エネルギー価格の上昇は、やがて食品価格や生活コスト全体を押し上げる。そしてそれは、社会不安や政権の安定性に直結する。中国指導部はその連鎖を強く恐れている。
2026年、中国政府はGDP成長率目標を4.5~5%に引き下げた。これは1990年代以来、初めて5%を割り込む水準である。ここにエネルギー価格のショックが重なれば、成長はさらに下振れする可能性が高い。
イラン戦争において、中国が本当に警戒しているのは、戦争そのものではない。それが引き起こす「価格の連鎖反応」なのである。
米国のイラン攻撃で中国の影響力減
ロシアと北朝鮮に頼らざるを得ない
では、この戦争は中国の対外戦略にどのような影響を与えているのか。一言で言えば、中国がこれまで築いてきた「非米圏ネットワーク」は、確実に揺らいでいる。
米国はパナマ運河をめぐる圧力を強め、さらにベネズエラやイランに対して軍事行動を展開した。これらはいずれも、中国が影響力を拡大してきた地域である。結果として、中国の対外戦略は大きな制約を受けることになった。
その中で、中国が頼らざるを得ないのがロシアと北朝鮮だ。
かつてロシアはウクライナ戦争で消耗し、中国優位の関係が続いていた。しかし現在、エネルギー情勢の変化がこの力学を揺り戻している。ホルムズ海峡の不安定化により、中国のロシア産エネルギーへの依存度は上昇し、ロシアの発言力は一定程度回復した。
両国関係は再び「相互依存」に近づきつつある。
一方で中国は、北朝鮮との関係強化にも動いている。北京と平壌を結ぶ国際列車の再開、直行便の復活、さらには貿易拡大――これらの措置は偶然ではない。中国が構築してきた対外ネットワークが崩れつつある中で、北朝鮮との関係は「維持すべき最後の安全保障カード」となりつつある。
ただし、ここで見落としてはならない点がある。







