26年1月22日、米国土安全保障省のノーム長官(当時)がある女性の写真をXに投稿した。ミネソタ州セントポールで、移民・税関捜査局(ICE)に抗議するデモに参加して拘束された弁護士で、信念の強さが感じられるような毅然とした表情で連行されているところだった。

国土安全保障省のクリスティー・ノーム長官が自身のXに投稿した画像(左)(同氏Xより)、ホワイトハウスの公式Xアカウントに投稿された画像(右)(ホワイトハウス公式Xより)国土安全保障省のクリスティー・ノーム長官が自身のXに投稿した画像(左)(同氏Xより)、ホワイトハウスの公式Xアカウントに投稿された画像(右)(ホワイトハウス公式Xより)

 しかし、それからほどなくしてホワイトハウスの公式Xでは、まったく同じ構図の写真ながら、この女性が悲痛な泣き顔を浮かべているバージョンが投稿されたのだ。米紙ニューヨーク・タイムズや英紙ガーディアンが検証したところ、ホワイトハウスの投稿はAIによって改ざんされた可能性があるという(朝日新聞 2月5日)。

 なぜそんなことをしたのかというと、トランプ大統領が進める不法移民取り締まり強化への支持を集めたいからだ。要は「プロパガンダ」である。

 ICEへの抗議をする人々が「自分たちは決して間違っていない」という毅然とした態度で拘束されている写真では、ICEを支持する人もイラッとするし、無関心層の中に共感や興味という感情がわきあがってしまう。

 しかし、抗議デモ参加者が惨めに泣き崩れている写真ならば、ICE支持者は胸がスカッとするし、無関心層も「ああはなりたくないな」と腰が引ける。

「いやいや、だからといって天下のホワイトハウスが改ざんなんて許されないでしょ」と思うかもしれないが、今のアメリカではそれも許されてしまうような風潮がある。

 トランプ支持者というのはその写真がフェイクかどうかなどはそれほど気にしない。いかに胸がスカッとするか、見ていて気持ちがいいのかが重要だからだ。

 わかりやすいのは今、トランプ支持者の間で大バズりしている“愛国美女インフルエンサー”ジェシカ・フォスターである。

 この金髪の美しい陸軍兵士はインスタを始めてからわずか4カ月でフォロワーは100万人以上。F-22ラプター戦闘機の前でポーズを取り、砂漠で迷彩服に身を包み、イランへの攻撃開始日にはドナルド・トランプ大統領とともに飛行場を歩く映像も投稿された(クーリエ・ジャポン 3月22日)。

 ただ、実はジェシカ・フォスターなる陸軍兵士は存在が疑問視されている。

 ワシントン・ポストが報じたところによれば、陸軍にそのような人物は在籍しておらず、AI画像生成ツールによって作られた「トランプ支持者たちの理想の女性」である可能性が高いという(当該アカウントはインスタグラムの規約に違反したとして削除された)。

 このようなフェイク写真・映像を日常的にシャワーのように浴びているトランプ支持者たちに、ホワイトハウスがプロパガンダを仕掛けようと思ったら当然のように、写真や映像は改ざんされる。彼らがそれを真実だと思うか否かが大事なので、なにも「本物」である必要はないのだ。

 さて、そこで「踊る高市首相」に話を戻そう。