Photo by Masato Kato
楽観ムードが漂う中で、米国によるイラン攻撃が勃発。上昇相場に乗り遅れた個人投資家は今から買っていいのか。本稿では資産300億円超を築いた投資家・片山晃氏に日本株の中長期見通しを直撃。片山氏は「日本株は数十年に1度の黄金期」と分析しつつ、過去の常識をアップデートする必要があると述べる。果たしてその真意とは。特集『日経平均6万円突破か減速か 攻めと守りの投資術』の#1では、片山氏が中長期で有望とみているセクター、今回の相場で狙うべき銘柄や避けるべき戦略、見え隠れするリスクについても具体的に明かしたロングインタビューをお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
国内要因と外部要因がかみ合い
日本株は数十年に1度の黄金期へ
――米国によるイラン攻撃の影響で調整したものの、依然として日本株は高値水準にあります。実際、高市政権の政策や企業変革などにより、日本株に強気な投資家が増えています。日本でもようやくインフレが定着しつつあることもあり、金融機関やわれわれメディアも含めて、「投資をしないと資産が目減りしますよ」というメッセージが目立ちます。一方、PER(株価純資産倍率)などバリュエーション的には割高ではないかという指摘もあり、「この水準から買っていいのか」と悩む個人投資家もいます。
従来の日本株のPERの上限を超えているという指摘は、実際そうだと思います。ですが、それに値するだけの変化が起こっているとみています。従来のレンジを外れてくることは「むしろ当然」、そんなものでしょうと考えています。
もちろん、どんな強気相場でも一時的に調整することはあるので、その前提は持って行動するべきです。例えば今回の米国とイランの問題も過熱していた相場を冷やす格好の材料になりましたし、想定以上に長期化した場合の影響は考えておくに越したことはないです。
とはいうものの、長い目で見たときには今の日本株を持っていないということは、本当の意味での「持たざるリスク」になっていると感じます。「日本株に何十年に1回の黄金期」が今来ていると私にはみえます。
――「何十年に1回の黄金期」というところ、もう少し具体的に頂けないでしょうか。
これは武者陵司さんがおっしゃっていることのコピーなので、僕の意見として言うのはおこがましいのですが……。
結局のところ、背景には米中新冷戦があります。そのために米国を中心に、とにかく先進国の工業力を引き上げて、しっかり中国を抑え込めるようにしようとしています。
各国が動いているわけですよね。サプライチェーンの再構築、レアアースの中国依存度を減らすなど、一生懸命にやっているわけです。そして、そのときに日本の持っている技術力が非常に重要になってくる。
AIに関しても、米国は中国にAI競争で負けるわけにはいかない。ここを握られると国が滅んじゃいますから。
実際、ビッグテックが競い合って巨額の投資をやっているわけです。彼らのキャッシュフローが急減しているという話が注目されましたけれど、その減った先がどこに行ったのかといえば、その多くがAI半導体を作るための部材やチップを作っている台湾、韓国、日本です。
だから日本はフジクラが上がり、アドバンテストが上がり、レゾナック・ホールディングスなどその他の銘柄も高値を取ってきている。電力も重要なので、相変わらず三菱重工業は強いし、日立製作所や三菱電機も堅調ということになっている。
とにかくファンダメンタルズが非常にいいわけですよ。大局観の中で日本に実需の投資がすごく流れ込んでくる。
もう一つは、成長投資をすることで、それをしっかりとドライブしていくような政権に代わったことです。設備投資を応援するような話が政策としてどんどん出てきている。世界が行きたがっている方向に対して、日本の政治もしっかりと向いてやっていきますというような準備が整ったわけです。
この二つがかみ合って、30年間続いたデフレも反転して金利のある世界に戻ってきている。国内要因と外部要因、全部がかみ合っています。
さらにAI投資という人類で初めて起きている、とてつもないイノベーション。その投資の中心地に日本が位置しているっていうことですから、これ以上のことって多分もうないですよね。
かたやま・あきら/1982年生まれ。2005年に65万円で株式投資を始め、17年には資産140億円に到達。その後はヘッジファンド運営、事業投資、スタートアップ投資に活動の幅を拡大。近年は自己資金の運用に加えてディーリング事業を立ち上げ、後進の育成も積極的に行っている。現在の総資産は300億円台。 Photo by M.K.
――日経平均株価は急落後も高値水準で推移しています。AI投資、AI相場はまだ始まったばかりと考えていいのでしょうか。
株価はかなり上がっているので、ここが初動とか言うつもりはありません。ですけれど、AI投資がすぐにやむという感じはしません。
昨年の秋の段階では米ビッグテックの投資について、実るかどうか分からないけれど、生存競争のために決死の巨額投資をやっているとみていました。ビジネスではなく、生き残るための戦いなんだと思っていました。
ところが、2026年に入ってから認識を変えました。最初にそのサインをはっきり感じたのが1月13日のTSMCの決算説明会です。
簡単にまとめると、「AI業界の成長に対して、一番のボトルネックはTSMC自身のキャパシティーが足りていないことだと認め、顧客のために設備投資をして全力でこれを解消しにいきます」と言ったわけです。
今後は韓国サムスン電子や米インテルも加わってきますが、現状では事実上彼らにしかAIチップは作れないわけですから、ほぼ全ての需要を把握しているわけですよ。その彼らが最終需要家、つまりビッグテックと綿密にやりとりをしながらAI投資は本物だと認識して、自分たちが間違っていたことを認めたわけです。
この本物とはどういうことか。需要が来年にピークを付けて再来年は減るのであれば、TSMCのようなファウンドリは設備投資をしたくないはずです。そのあと稼働率が下がって、めちゃくちゃ損をするから。
実際、今までTSMCは設備投資に慎重でした。その彼らが姿勢を変化させたということは、今すぐに設備投資をしないと、少なくとも3年から5年のタームで彼らの需要を満たすことができないと納得したと思うんですよね。
その後、需要家側であるビッグテックの決算も出ました。そこで各社のCEO(最高経営責任者)が「昨年よりもさらに大きなCAPEX(資本的支出、設備投資)をする」と発表しました。発言内容も3カ月前のトーンとは全く異なり、「AI投資は素晴らしい。自分たちはその成果に満足しているからもっと投資をしたい」というように変わっていました。
TSMCが言ったことを再確認、裏付けるような話ですよね。外からは見えないけれども、確実に彼らは自分たちが投じている何十兆円っていうお金に対して満足していると思うんですよ。そこが最大の変化です。
この時点で、今後数年間のAI投資の方向性は決まったと僕は受け止めました。昨年秋から半導体のポジションを増やしてきましたが、その段階では半信半疑なところもありました。
ですが、1月14日からはショート(売りポジション)を全部返して、2月末までは裸のロング(買い)でやってきました。僕がどう思うかという次元ではなく、今この世界を決めている連中がそういうふうに腹をくくったんだから、違う現実が提示されるまではそれに乗るしかないでしょうということですね。
もちろん、本当のところは分からないですよ。何十兆円という投資について、いつかは回収するための費用を顧客に請求するわけですけれど、それが可能かどうかについてまだ確信はありません。
ただ、実際に日頃AIを使っていて便利だなという感覚はあります。AIが無用の長物であるとは全く思っていません。
――昨年取材させていただいた7月時点の資産は250億円でした。今の資産はどれぐらいですか。
総資産の全てを株で運用しているわけではないのですが、それでも今年の成績は良好で300億円台には入りました。
――今後1年、2年を見たとき、どんな投資戦略を考えていますか。
次ページでは片山氏が「米国株よりも日本株」「とにかくフィジカル」「強烈な二極化の進行」「外国人投資家が相場をつくる」「小型より大型」「一時的な調整時の対処法」「割安度の判定術」「AI相場の賞味期限」「日経平均10万円の可能性」など、今回の相場のキーワードを分析。取るべき戦略、取ってはいけない戦略、さらには個人投資家が注目するべき有望セクターや銘柄の条件、台頭しつつあるかもしれないリスクについても触れたロングインタビューをお届けする。







