かつての受賞者として語る
応募プロセスに潜む「意外な価値」
JUN NAKAGAWA京都大学法学部卒業後、2000年に富士通へ入社。02年に中川政七商店に入社し、08年に十三代社長、18年に会長に就任。「日本の工芸を元気にする!」を掲げ、工芸業界初のSPA 業態を確立するとともに、経営コンサルティング・教育事業を展開。25年に会長を退任。現在は、志ある企業の共同体PARaDEや、ビジョンを起点とした経営コンサルティングを行うVISION to STRUCTUREの代表として、世の中に「いい会社」を増やす活動に取り組んでいる。「ポーター賞」「日本イノベーター大賞優秀賞」などを受賞。「カンブリア宮殿」「SWITCH」など、テレビをはじめとする多くのメディアに出演。経営・デザイン分野での講演や執筆活動を行い、著書に『経営とデザインの幸せな関係』(日経BP社)、『ビジョンとともに働くということ』(祥伝社)などがある。
――ご自身も受賞者としてグッドデザイン賞に接してこられましたが、その価値をどのように実感されていますか。
中川 2008年に「花ふきん」で金賞を頂いたときの話です。応募したのは、売上げにつなげようというものではなく、この商品の良さを社内でうまく説明したいという思いからでした。長く売れている商品ではあったのですが、営業は「色がきれいだから売れている」と認識していました。もちろんそれも一つの要因ですが、僕は、本質はそこではないと思っていました。僕が花ふきんがいいと思うのは、大判薄手であるというところです。8枚重ねの30センチ角ではなくて、2枚重ねの60センチ角であることが吸水性と速乾性という一見相反する機能の共存を生んでいる。それを社内に理解してもらうことに当時苦労していたのです。
そこで、グッドデザイン賞に応募したところ、見事にその点を評価していただき、それから社内の理解が一気に変わりました。この賞が外部に価値を伝えるだけでなく、社内の認識をそろえるきっかけにもなると実感した出来事でした。
――狙い通りだったというわけですね。
中川 実は想定外のこともありました。奈良の蚊帳生地という、衰退しかけていた産業に新しい用途を見いだしている点も評価されたことです。当時の自分には、地域や産業といった視点がほとんどなかったので、そこを指摘されたときに、はっとしました。
その話を社内に持ち帰ると、また視点が広がる。結果的に、商品の価値に対する理解が一段深まったのです。
――価値の証明だけでなく、価値そのものを広げてくれる場ということですね。
中川 応募する企業にとっては、その過程や評価を通じて、さまざまな気付きを得られると思っています。ただ、その価値が十分に知られていない部分もある。そうした価値を整理して伝えていくことも、自分の役割だと思っています。
その一つが、応募のプロセスの意味付けです。応募用紙を書くときには、その会社やブランドのビジョンを考えなければなりません。今までもそういったことを記す欄はありましたが、今後はその点をより明確に書いてもらうようにしたいと考えています。そうなると、商品企画の人だけでは書けないので、経営者と話をする必要が出てくる。そこで初めて、「この商品は何のためにあるのか」「会社として何を目指しているのか」という議論が生まれるわけです。これはビジョンとプロダクト、そしてデザインがどうつながっているのかを考えるきっかけになると思います。
――経営とデザインが一緒になって言葉を作る機会ということですね。二つ目の課題にもつながる話です。
中川 最初は後付けでもいいと思います。これまでそこまで考えて作っていなかったとしても、いったん言葉にすることで、次に作る商品は確実に変わるはずです。そうやって、ものづくりそのものが良くなっていく。
グッドデザイン賞は、そのきっかけになり得ると思っています。







