共通言語をつくるだけでは足りない――経営とデザインが本当につながる条件とは

中川政七商店でブランドを経営に生かし、その知見をもとに数十社の企業再生に関わってきた中川淳氏。インタビュー前編では賞の価値やデザインの定義について語ったが、後編ではさらに踏み込み、経営とデザインの関係性に切り込む。両者がつながるために必要なのは、ブランドという実践に他ならない。その先に、グッドデザイン賞の活用という視点が見えてくる。(聞き手/音なぎ省一郎、撮影/まくらあさみ)

「ブランド」が共通言語になる
これだけの理由

――「経営とデザインの相互理解」を大きな課題として捉えられているようですね。

中川 先ほどの「デザインとは何か」を説明する言葉も、その理解のためのものです。逆に言えば、その落としどころが見えないままでは、いつまでたっても双方のリテラシーは高まっていかないのではないかと思います。

――しかし、デザインの定義を揃えるだけで、両者の距離は縮まるでしょうか。

中川 その距離を埋める鍵は「ブランド」にあると考えています。デザインの定義づくりは前提として必要ですが、それ以上にブランドをどうつくるかという議論のほうが、両者の距離は縮まりやすい。

 ブランドをつくる、あるいはマネジメントするとは何か。それを経営側とデザイン側が共に追究していくことが、結果としてデザインのリテラシーを高めることにつながるはずです。

 これはこれまで自分が取り組んできたことでもあります。ただ、従来は経営側の視点から考えることが中心でしたが、今回の立場を頂いて、デザイン側からも捉え直す必要があると感じています。

――「ブランド」も既にビジネスの言葉としては確立しています。

中川 ブランドは、経営ほど学問的に整理されているわけではないと思っています。だからこそ、経営の中で位置付けが曖昧になりやすいし、時には軽視されてしまうこともある。

 特に最近だと、西口一希さんが「アップルの、広告史に残るようなクリエイティブなCMでも、すぐに売り上げにはつながらなかった」という話をされています。この広告でスティーブ・ジョブズが意図したのは、売上への貢献ではなくビジョンの再定義だったいう解釈ですが、短期の数字に影響するかはともかく、長い目でブランドの効果として見れば、必ず売り上げに効いているはずだと僕は考えます。

 西口さんのようにデジタルマーケティングの分野で強い影響力を持つ方がそう発言されると、経営者としては「デザインは成果がよく分からない。難しそう。やっぱり意味がないんじゃないか」という流れになってしまう。