ELENA SCOTTI/WSJ; ISTOCK; SORA
米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は3月、米誌バニティ・フェア主催のアカデミー賞授賞式後のパーティーに出席するため、ロサンゼルスに到着した。そのわずか数週間後には、同社の動画生成ツール「Sora(ソラ)」をハリウッドの映画スタジオが使用できることになっていた。
対話型AI(人工知能)「チャットGPT」が大成功を収めたのに続き、ソラは消費者向けAIの次のフロンティアだとの触れ込みだった。このシンプルなアプリは、米国発のエンターテインメント要素が強いバスケットボールチーム「ハーレム・グローブトロッターズ」さながらのドリブルワークを披露し、映画「スター・ウォーズ」の悪役ダース・ベイダーとライトセーバーで戦わせるなど、ユーザーが自分や友人らを好きな場面に登場させ、動画を生成できるものだ。
米娯楽・メディア大手 ウォルト・ディズニー のボブ・アイガー前CEOはこの構想に賛同した。ディズニーが10億ドル(約1600億円)をオープンAIに出資することで合意し、傘下のマーベルやピクサーなどの作品のキャラクターをソラの動画に登場させることを許可した。同様に重要なのは、アイガー氏がディズニーの貴重なお墨付きを、誕生して間もない技術に与えたことだ。業界では折しもクリエーティブな作品をAIからどう守るかを巡って懸念が広がっていた。
その後オープンAIは突然、 ソラを廃止すると決めた 。
ディズニー幹部は衝撃を受けた。その多くは発表後1時間たたないうちにこの決定を知らされた。彼らが知らなかったのは、ソラが公開後の数カ月間に徐々にオープンAIの重荷となっていたことだ。同社は早ければ年内に実施される可能性のある新規株式公開(IPO)に向け、事業の主力分野を絞ろうとしていた。
オープンAIでは、コードネーム「Spud」と呼ばれる次世代AIモデルが数週間以内に完成するところで、コーディングや法人向けの製品を同モデルで動かすための「計算資源」をさらに開放する必要があった。AI半導体はどの主要な研究所でも最も貴重なものとされる。オープンAIの場合、ソラがあまりにも多くそれを消費していた。
ソラは赤字にもかかわらず、ユーザーが第2次世界大戦のニュース映画やハリウッドの追跡シーンに自身の映像を重ね合わせるたびに有限のリソースが費やされた。
ソラは今では、高くついた戦略上の判断ミスのようだ。それはシリコンバレー全体で激化するAI人材争奪戦の中心にいた花形従業員によって主導された。
アルトマン氏はこの動きを、会社のより大きな目標に向けた困難だが必要な犠牲であると説明し、従業員宛てメモの中で、彼らが会社のために「困難なトレードオフ」をいとわなかったことに自身も励まされたと述べた。







