丸山ゴンザレス氏 著者提供
メキシコの麻薬カルテルの取材を行っていた、ジャーナリストの丸山ゴンザレス氏。その道中において、現地ガイドのガブリエル氏が麻薬カルテルの恐ろしい暴力の背後にあるロジックを解説してくれた。※本稿は、ジャーナリストの丸山ゴンザレス『ナルコトラフィコ』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。
現地ガイド・ガブリエル教授による
特別授業「麻薬カルテルとは何か」
車を走らせていた。目的地は、観光地カンクーン――シカラクからの長距離の移動中、エアコンの効いた車内には一定の緊張と沈黙が漂っていたが、ふいに助手席のガブリエルが口を開いた。
「今から、ドラッグの基礎知識をつけてもらいます」
その言い方は、いつになく“先生っぽい”響きだった。
彼はジャーナリストであると同時に大学教授でもある。ここまでは、現地ガイドでも、密輸事情に詳しい情報屋でも、苦い経験を共有する戦友でもあった。その多面的な顔のどれとも違う、“教壇に立つ男”の目が、この時だけははっきりと見えた。
「時間があるうちに、知識の整理をしておいた方がいい」
たしかにそうだと思った。
目の前にあるカルテルの現実は、断片的な暴力や事件の羅列として押し寄せてくる。だがそれらをつなぐ基礎知識がなければ、ただの“怖い話”で終わってしまう。
現場を歩くからこそ、あえて一度立ち止まって体系的に理解する必要がある。暴力の背後にあるロジックを、ちゃんと「講義」として教えてもらう時間が、ここにきて必要だった。
だからこの「特別授業」は、重要だった。







