熊本地震で被害を受けた住宅熊本地震で被害を受けた住宅(さくら事務所撮影)

熊本地震から10年
木造住宅の被害実態

 2016年4月14日の熊本地震から、まもなく10年を迎える。観測史上初めて震度7が2度にわたって同じ地域を襲ったあの地震は、多くの木造住宅に深刻な被害を残した。そして「現行の耐震基準を満たしていれば倒壊はしないだろう」と広く信じられていた常識に、正面から疑問を投げかけた震災でもあった。

 日々、住宅の検査現場に立ち会う私たちさくら事務所にとっても、その教訓の重みは変わらない。熊本地震の被害を振り返りながら、今も残る施工リスクの実態、そしてこれからの住宅耐震で本当に目を向けるべきポイントをお伝えしていきたい。

 まず振り返っておきたいのは、熊本地震で木造住宅がどれほどの被害を受けたかという事実である。被害が集中した熊本県益城町の中心部について、国土交通省が建築時期別に整理した調査データ(※1)を見てみよう。

※1 国土交通省:「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書より、熊本県益城町中心部における建築学会の悉皆調査データ

 対象となった木造1955棟のうち、倒壊・崩壊した建物は297棟(15.2%)、大破が230棟(11.8%)。無被害だったのは414棟で、全体のわずか21.2%にとどまっている。

 日頃から住宅の検査に立ち会う私たちがとりわけ驚かされたのは、2000年6月以降に建築確認を受けた「現行基準」の住宅にも被害が及んでいた点である。

図3.2-11 木造の建築時期別の被害状況図3.2-11 木造の建築時期別の被害状況 拡大画像表示

 倒壊・崩壊が7棟、大破が12棟。2000年基準とは、1981年の新耐震基準をさらに強化し、地盤調査や柱の接合金物の指定を義務化した、住宅耐震の現行ルールにあたる。この基準下の住宅であれば大きな地震でも倒壊はしないと考えられていただけに、「基準適合=絶対安心」ではないという事実は、業界にとっても重い問いかけとなった。

 もっとも、2000年基準以降の住宅全体では無被害率が61.4%と、旧耐震の5.1%、新耐震の20.4%を大きく上回っている。基準の強化が命を守る効果は、数字にはっきり表れている形だ。それだけに、なぜ一部の住宅が倒壊に至ったのか、その要因を知っておくことが重要になるだろう。