不動産の新教科書写真はイメージです Photo:PIXTA

注文住宅で特に目立つ
不具合の指摘率上昇

 SNSを通じて、かつては見えにくかった家づくりの舞台裏が、ごく自然にタイムラインへ流れてくるようになった。「#欠陥住宅」や「#施工不良」といったハッシュタグと共に、現場の生々しい様子を伝える写真や動画が目に留まるのは、今や日常的な光景となりつつある。内輪話だったトラブルが可視化された今、マイホームを夢見る人の不安はふくらむ一方だ。

 こうした投稿を機に、さくら事務所にも「自分たちの家は大丈夫だろうか」との声が寄せられるようになった。とりわけ注文住宅においては、私たちの最新データでも不具合の指摘率が上昇傾向にあり、現場の「目配り」が十分に行き届いていない実態が浮かび上がっている。

 だが、注文住宅とは本来、完成品を「買う」のではなく、施主自らが旗振り役となり、数千万円という資金を投じて理想を形にする役割を担う巨大なプロジェクトである。しかし現在、そのパートナーとなるべき現場のキャパシティが限界を迎えているという、もう一つの現実がある。今、住宅づくりの最前線で何が起きているのか。最新データから現状を明らかにし、納得のいく住まいを守るための備えを整理していく。

注文住宅は「請負」という名の
過酷なプロジェクト

「せっかくの家づくりなのに、なぜこんなに不安にならなければいけないのか」。そう感じるのは、決して施主側のわがままではない。

 背景には、注文住宅という買い物の仕組みそのものが抱える、避けがたい特殊性がある。同じ新築でも建売住宅の多くは、実物を見て納得してから判を押す「売買契約」だ。それに対して注文住宅は、まだこの世に存在しないものに対して数千万円を投じる「工事請負契約」である。施主自身がプロジェクトのリーダーとなり、プロのチームに夢の具現化を依頼するクライアントワークなのだ。

 プロジェクトでは、施主にしか下せない判断が数多く存在し、意思決定の作業は膨大となる。一生に一度の重圧のなか、不慣れな役割を担うことは心身を削る作業だろう。プロとの圧倒的な情報の格差がある中で、決断の多さが「言った」「言わない」のトラブルを生む土壌にもなっている。これは個人の問題ではなく、日本の家づくりが抱える「構造的な難しさ」そのものなのだ。