残念なお店は「クーポン」を渡すだけ。一流のお店は何をする?
それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さん。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた「気づかいのコツ」について紹介しましょう。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
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当たり前を徹底的に
私はサービス業の、「お客様満足向上施策」の支援もしています。
よく現場で相談をいただくのが、「どうすればもっとお客様に喜んでもらえるか」。
その際、多くの企業や店舗が「一品サービス」や「次回使えるクーポン」といった、プラスアルファの施策を考えがちです。
もちろん、それらも一つの方法ではありますが、本当の意味でお客様の心を動かし、深い満足を生むのはそこではないと、思うのです。
一番のお客様満足とは、「当たり前のことを、圧倒的に高い水準で、徹底的にすること」から始まるというのが、私の考えです。
「気持ちいい接客」とは
先日、あらためてそう思い知らされた体験をしました。
都内の繁華街にある、とあるチェーンの飲食店に、13時過ぎに一人訪れたときのことです。
店内はランチの一巡目が終わったタイミングで、テーブルにはまだ食器が残っていました。
カウンターが空いていたので「一人なので、カウンターでいいですよ」と伝えた私に、店員さんから「すぐに片付けますので、ちょっとだけお待ちください」と笑顔で返されると、すでにほかの店員さんがテーブル席を整え始めているのが目に入りました。
何気なくその様子を眺めていた私は、その「当たり前」の質の高さに驚きました。
その店員さんは、食器を下げた後、テーブルの四隅を丁寧に拭き上げ、クロスをクルっと裏返したら、メニューや調味料の容器まで一つひとつ拭き、さらには、またクロスの使っていないところで、テーブルのエッジ(縁)や、椅子の背もたれまできれいに整えてから、「お待たせいたしました。こちらへどうぞ」と招き入れてくれたのです。
その瞬間、私にこみあげてきたのは、「大事にされている感」。
それは何とも、心地よいものでした。
まず「目の前のお客様」
そういえば、お店に入った瞬間の「いらっしゃいませ」の声も、他とは明らかに違っていました。
入り口のスタッフだけでなく、厨房の奥にいるスタッフ全員が、調理の手を止めることなく私の方を向いて、笑顔で迎えてくれたのです。
これは帰る際の見送りも同じでした。
レストランですから、テーブルを拭くのは当たり前です。
あいさつをするのも当たり前です。
けれども、その「当たり前」の基準をどこまで高められるか。
特別なクーポンといったプラスアルファのサービスではなく、目の前のお客様のために隅々まで整え、全員で歓迎する。
そんな「当たり前の徹底」こそが、何よりのお客様満足に繋がるのだと、私自身もあらためて確信した貴重な機会となりました。
心地よさは人に言いたくなる
ビジネスの世界では、どうしても「目新しい戦略」や「効率的なシステム」に目が向きがちです。
ただ、お客様が最後に信頼を寄せるのは、こうした細部に宿る「誠実さ」ではないでしょうか。
そして、こうした「心地よさ」を覚えたお客様は、必ず誰かにその体験を話したくなります。
現に私が今、こうして皆さんにこのお店の話をしているように。
あなたの仕事における「当たり前」を、もう一度見つめ直してみませんか。
たとえば、重鎮の取引先へ渡す資料のフォントを少し大きめに整える。
メールの返信に、相手を思いやる一言を添える。
相手が座りやすいように、椅子を引く。
その小さな気づかいが、相手に伝わり、心の深いところでの「満足」へと変わっていきます。
「あの人は、ちょっと違うね」が生まれるのは、そんな瞬間に触れたときだと思います。
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。著書に5万部を突破した『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)がある。





