アメリカとイスラエルによるイラン攻撃に関しても、習近平氏に忠実な王毅外相が、3月1日のロシアを皮切りに、湾岸諸国や欧州各国に「早期停戦」を呼びかけ、「国際社会の新盟主は中国」と言わんばかりの立ち回りを見せてきた。

 今のイラン情勢は、ロシアからの石油輸入量が一定量ある中国にとって、日本ほど痛手ではない。

 そのうえ、アメリカは中東に兵力を割き、東シナ海や南シナ海でのプレゼンスが弱まっている。トップであるトランプ氏は国際社会で信頼を失い、他方で、習近平氏への期待度が爆上がりしている。これは中国にとって悪くない展開なのだ。

 5月14日~15日、トランプ氏は北京で習近平氏と首脳会談に臨むが、今のままであれば、その構図は、中間選挙が控えているにもかかわらずイラン攻撃で結果が芳しくなく、焦るトランプ氏と、そのありさまを、余裕を持って見ている習近平氏の会談という形になる。

米中のはざまの高市政権が進めるべき独立外交

 アメリカは頼りにならず、中国はリスクの度合いを増す……。そんなG2(アメリカと中国)のはざまにある日本としては、今ほど独自の外交力が試されるときはない。

 原油や液化天然ガスのみならず、レアアースや半導体など、地政学リスクによって調達が滞り、流通に目詰まりが起きそうな物資は多々ある。

 調達先の多角化などに全力を挙げるのは当然として、「アメリカの繁栄のために経済運営や防衛政策を実施している」状況から脱皮し、さりとて中国にも依存しない経済安全保障政策や産業政策を急ぐべきだ。

 まだ任期が2年半以上も残るトランプ氏には「面従背腹」(表面的には従う姿勢を見せながら、内心では賛同しない)で臨み、習近平氏とは対話の扉だけは開いておくことだ。

 その一方で、マクロン氏やスターマー氏、あるいはオーストラリアのアルバニージー首相らと気脈を通じ、サプライチェーンの構築や防衛協力を深化させておきたいところだ。

 今の日本は、戦国時代に例えれば、豊臣と徳川に挟まれた小大名のような存在だ。2大勢力に属さない大名や、他の小さな大名と手を携え、生き残る知恵を絞るしかない。

(政治・教育ジャーナリスト/びわこ成蹊スポーツ大学教授 清水克彦)