ダイヤモンド社刊 1700円(税別) |
「政府は、兵器とその使用に対する独占的な地位を急速に失いつつある」(『新しい現実』)
ドラッカーは、早くも1980年代より、テロの脅威を繰り返し警告してきた。
400年前の近代国家成立から始まり、陸軍、海軍、空軍の創設、さらには、国家と政治の中心概念としての国防の概念への成立と続いてきた道も、行き止まりに来てしまったという。
実際、小荷物として郵送され、リモコンで爆発する細菌兵器、化学兵器への対処策はあるだろうか。
国家独占として巨大化と精緻化に励んできた軍事力が、新たに出現したテロという最大の敵に対処できないでいる。あるいはテロリストが復権させた私兵に対処できないでいる。
私兵が跋扈する社会は、安全とはほど遠い弱肉強食の世界である。国家間の戦争として戦い、勝利を収めても、そのあとがテロとの戦いになったのでは勝利とはいえない。
中央集権化で、国家はあらゆる社会的機能を手に入れてきた。今は肥満体となった国家が、「小さな政府」として、不得手な活動を民間などの組織に委ね始めたところである。
しかし国家には、最後まで独占してもらうべき領域がある。それが国防であり、テロ対策である。そして、そのための国際連携である。
「テロに対しては、伝統的な意味における国防は、無効である。個々の政府の対策では、テロを抑えることも、駆逐することも不可能である」(『新しい現実』)