定年なし、何歳までも働けると報道されている事例の多くは、実際には、定年後再雇用の上限年齢がなく、有期雇用契約を繰り返すパターンです。それらの場合は、企業側には、契約期間満了時に契約更新をしないという選択肢が残るので、定年制度がない正社員のケースとは異なります。
日本は解雇要件が厳しいことで知られています。これに対し、たとえばアメリカは“Employment-at-Will”の国です。直訳すると「意思に基づく雇用」ですが、「解雇自由の原則」と訳すほうが意味は明確に伝わります。これは、雇用する意思がなくなれば解雇できるということで、雇用主は特に理由がなくても自由に従業員を解雇できます。
日本の定年制度は
撤廃すべきなのか?
解雇が制限されるのは、差別禁止法違反(性別、年齢、人種、宗教などによる差別)、公共政策例外(公益通報者への報復など、法律に違反する解雇)、暗黙の契約例外(個別の雇用契約などに反する解雇)の場合くらいです。日本とはまったく雇用条件が異なります。
アメリカは自由に解雇できますが、定年を設けることは違法です。日本は解雇が非常に難しい反面、定年制度が認められています。そして何より、日本では定年後再雇用者の給与すら年齢一律基準で決める企業が3分の1もあるわけですから、いつまでも退職の意思を示さない人に対して定年制度なしに個別対応で退職勧奨することは、企業にとってハードルが高すぎます。現実的な選択肢にはなりにくいだろうと思われます。
『定年前後のキャリア戦略 データで読み解く60代社員のリアル』(藤井 薫、中央公論新社
筆者は、「定年なし」の理念には共感するものの、企業にとってだけではなく、働く個人にとっても、定年制度はあってもよいものだろうと考えています。定年制度とは、その年齢になれば自動的に雇用契約が終了する制度。つまり、その年齢までは雇用が保証されているとも言えます。その意味では、定年は、少なくとも継続雇用が法律で義務化されている65歳にすべきです。
しかしそれ以上はどうかというと、企業にとってはもう義務ではないわけですから、個人別に是々非々の定年後再雇用でよいはずです。働く個人にしても、「会社の厚意で雇ってもらっている」という「ぶら下がり」状態がいつまでもダラダラと続くよりは、個人が会社との関係を見つめ直して自分としての結論を出す期限が定年として決まっているほうが、その後の人生設計を考えやすい気がします。
そして、定年後再雇用で働き続けるにしても、職業人としての自分の価値に見合う処遇で企業と契約し、誇りを持って働くほうが充実度は高いのではないでしょうか。
ここまで、お金の話を中心に60代の働き方を見てきました。そろそろ、「働くうえで大切なことは、お金だけじゃないよ!」という声が聞こえてきそうです。







