小さな節約を日々意識し続けることは、脳に大きな負担を与えます。
心理学ではこれを「決断疲れ(decision fatigue)」と呼びます。無駄な場面で意思決定の体力を消耗してしまうと、投資判断やキャリアの選択といった、本当に重要な場面で力を発揮できなくなります。
たとえば、Wi-Fiルーターを買うためにYouTubeを何時間も見て比較検討する。それよりも身近にいるちょっと詳しい人に「おすすめを教えて」と聞いた方がよほど早く決断できます。そしてその分のエネルギーを、大切な商談や契約交渉に注ぐ(たとえば、契約書の文言をできる限り隅々までチェックして、慎重に交渉を重ねるなど)。
一代で成功した経営者たちは、こうしたメリハリのあるお金と時間の使い方をしているのです。
それに対し、昔の私は、生産性アップのガジェットを探すためにAmazonとYouTubeを行ったり来たりしながら、気づけば睡眠を削り、翌日の生産性を落とすという、なんともあべこべな選択をしていました。
またある時は、自分へのご褒美で買った海鮮丼弁当が、時間が経って少し傷んでしまっていたにもかかわらず、「もったいないから」という理由で無理やり頬張って、案の定おなかを壊し、会議で「佐藤さん顔色悪いよ?大丈夫?」と心配されたこともありました。
一方、肝心の契約書のチェックや報酬の交渉は、なんとなくでやっていました。
私からしたら、「1500円の海鮮丼弁当を捨てるなんてもったいない」のですが、億万長者からしたら、そんなことより、それで体調を崩す方がもったいないし、報酬交渉で1500円を取り戻せばいいじゃないという感覚です。
「何を損失(脅威)だと考えるか」の感覚が、私と億万長者では、まるで違ったのです。
私は、せっかくご褒美に買った目の前の海鮮丼弁当を、自分の手で葬ることの感情的な損失を回避することを重視していたのですが、億万長者は、感情的な損失と、傷んだ海鮮丼弁当を食べることによって発生する怖れのある具体的な損失を天秤にかけて、「さあ、どっちをとる?」という意思決定をするクセがついているように思います。







