メガバンクや大手証券には、「プライベートバンカー」と呼ばれる社員が在籍する。富裕層の資産管理やファミリーの悩みまで聞く秘匿性の高い業務を担うが故に、その実態は謎に包まれている。特集『富裕層 億万長者の実像』の#4では、メガバンクの現役プライベートバンカーに取材し、その正体に迫った。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
「異動もなく社内で見掛けない」!?
謎多きプライベートバンカーの正体
「10年以上の長期在籍もザラで、銀行外の人脈が豊富。社内で見掛けることはほとんどないが、たまに驚くような大きなディール(取引)を持ってくる」
メガバンクで大企業を担当する法人部門の男性社員がそう語るのは、社内のプライベートバンカーについてである。金融機関は通常、法人部門やリテール部門に分かれ、企業や個人に金融サービスの提供を行っているが、プライベートバンカーはどちらにも所属していない。
一般的には2~3年で異動を繰り返す銀行員にあって、プライベートバンカーは10年を超えて異動しない者も珍しくない。メガバンクのプライベートバンカーは、資産規模がおおむね20億円を超える企業オーナーら超富裕層やその一族を担当し、1人当たり200人程度の顧客を抱えているとみられる。
プライベートバンカーは、銀行や証券会社の社員の誰もがなれるわけではない。営業で社内表彰を受けた成績優秀者らが選抜されることが多い。優秀なプライベートバンカーは、巨額の資産運用やM&A(企業の合併・買収)などの大型案件を顧客から任され、それが金融機関の収益に直結する。
だからこそ金融機関は、えりすぐりのエースをプライベートバンキング部門に送り込む。有能でなければ富裕層に愛想を尽かされ、おいしい案件にあずかれないどころか「出禁」になることもある。
富裕層ビジネスにシフトし始めた大手金融機関は今、プライベートバンカーの拡充や質の向上に注力している。では、彼らは一体どんな資質の持ち主で、どうすれば優秀なプライベートバンカーになれるのか。あるメガバンクでプライベートバンカー歴10年以上のキャリアを持つ「猛者」たちに直撃し、その正体を探った。