このように、ファッションとは服のことではありますが、ただの服ではなく、ある時代や社会の人々に受け入れられる服のことを指しています。
みんなと一緒でありたいし、オリジナリティも欲しい
哲学者であり社会学者であったゲオルク・ジンメルは、このファッションを、現代の社会に特有の現象とみなしました。
ジンメルは、都市の発展する社会では個人の心理が重要になると考えました。けれども一方で、その個人が集団に属しているという事実にも注目しました。
確かに人間は一人では生きられません。誰かと何らかの形で関わりあいながら生きています。一人ひとり別々の生活を送り、異なる人生を歩んでいますが、それでもあるコミュニティやある社会の一員として存在しているのです。
そのなかで、ファッションはある人の個性を表現すると同時に、その人を他者と区別する役割を担います。
たとえば、はやりの帽子を例に考えてみましょう。帽子はおしゃれの必須アイテムだった時代がありますが、現代はそうではありません。そのなかで、有名人やモデルの黒いキャップが目につくようになりました。そこで、その黒いキャップを取り入れることで、最新の流行に通じていることを示すことができます。
しかし、おしゃれな人はみな真っ黒なキャップをかぶることになります。そこで、黒いキャップでも白いロゴが入ったものにすることで、皆とは少し異なるセンスを示すことができます。つまり、黒いキャップをかぶることで、おしゃれ集団の一員であることを示し、白いロゴ付きにすることで、自分のオリジナルな部分を強調し、仲間内での差別化を試みるわけです。
ジンメルは、ファッションには同一化と差別化の作用があると考えました。同じ時代、同じ社会を生きている人々と、自分も一緒に同じ感性を分かち合いたいという同一化の願望が一方にはあります。他方には、大勢の人々のなかに埋もれるのではなく、自分は自分であるという気持ちを尊重したいという差別化の願望があります。
社会や集団に属する個を、一方で同一化させ、一方で差別化する。そういった同一化と差別化の無限反復的な運動が、ファッションなのです。







