悪役のキャスティングも面白い。暴力団の若頭であり、全身に入れ墨のある京極清志をムロツヨシが演じている。さらに、お笑い芸人であるシソンヌの長谷川忍がAVメーカーの社長、クズとしか言いようのない性格の売人をビスケットブラザーズの原田泰雅が演じている。シソンヌの長谷川はドラマ出演が多く、名バイプレーヤーとしての地位を確立しつつある。本作でも、実力派の役者たちに引けを取らない存在感を放つ。

 その他の脇役では、運び屋の曽我部を演じる黒崎煌代への注目度が高い。「どーじょー」「パーティーパーティー」と言いながら、マリファナやコカインを相手に渡す。この独特のイントネーションはこの役者にしかできないのではないか、と思わせる。

 曽我部は前科があるが、悪党たちの下っ端としてうまく使われている「弱者」である。闇社会の中で弱者として生きるのはどういうことか。原作が描ききった「弱者の尊厳」をここまでうまく体現するのは見事としか言いようがない。

 また、「ぴえん系女子」を演じた石川瑠華は実年齢が29歳で、10歳近く若い役柄を違和感なく演じきっている。出演シーンは多くないが、「事件の真相」回に登場する森田想(こころ)も良い。

 放送が開始してからも撮影が続くスケジュールとなる地上波と比べ、全話を一気に配信するNetflixドラマは、役者が役作りをしやすい、という声もある。『九条の大罪』のキャストは、いずれもその世界観の解釈にブレがなく、視聴者を引き込んでいく強さがある。

『九条の大罪』にシーズン2があるかどうかは、まだ発表されていない。

 ただ、シーズン1は誰がどう見ても続編があるであろうかたちで終わっている。原作が連載中であることもあり、続編を望む声は強い。

 おそらくシーズン2はそう遠くない時期にまた公開されるのだろう。視聴者の反応を伺いつつ、スピーディーに続編が制作できるのもNetflixの強みかもしれない。

『九条の大罪』は、原作の持つ過激さをただなぞるのではなく、視聴者がキャラクターに深く没入し、一気に見進められるよう緻密に再構成された一作だと言える。

 誰も完全な善でも悪でもない世界と、そこに生きる「弱者」のリアル。その説得力を支えているのは、キャスティングと演技の精度、そしてそれを可能にする制作環境ではないか。ネトフリだからできたのか――その問いに対する答えは、少なくとも本作においては「イエス」に近い。