学校の授業で学ぶ歴史には、偉人たちの輝かしい功績や「すごい」エピソードが数多く登場します。しかし、どんな人物にもそれだけでは語れない一面があります。歴史をひもとくと、「すごい」人の中にも、思わず目を疑うような「やばい」行動や選択が、数多く記録されているのです。
そんな「すごい」と「やばい」の両面から、日本史の人物のリアルな姿に迫るのが『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』。今回取り上げるのは、源平合戦で敵を震え上がらせたといわれる女武者・巴御前です。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局・三浦岳)

【謎の美女】源平合戦の「最強の女武者・巴御前」とは何者か?Photo: Adobe Stock

源平合戦で活躍した「女武者」

 平安時代末期、源氏と平氏が激しく争った源平合戦。

 その戦場で異彩を放ったとされているのが、源義仲に仕えた女武者・巴御前(ともえごぜん)だ。

 美貌と武勇を兼ね備えた存在として語られ、その強さは「一人で千人を圧倒する」ほどだったとも伝えられる。

 当時、戦場は男の世界だった。そうした中で巴御前は、単なる従者ではなく、前線で戦った存在として『平家物語』などに描かれている。馬を駆り、敵陣に切り込み、武功を挙げたとされるその姿は、敵味方の双方に強い印象を残したと考えられる。

巴御前のすさまじい戦いぶり

 主君・源義仲との関係もまた、巴御前を語るうえで欠かせない要素だ。幼い頃から仕え、特別な信頼関係にあったともいわれるが、その実態についてははっきりしない部分も多い。

 その義仲の運命が大きく揺らぐことで、巴御前の立場もまた変わっていく。義仲は平氏を破って都へ進出したのち、後白河法皇に疎まれ、源頼朝・義経らに追われる立場へと転じた。

 そして迎えた最期の戦い。ここで巴御前は戦場を離れるよう命じられたとされる。この判断は、戦力的な問題というよりも、当時の価値観を反映したものだったとも解釈できる。

『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』では、巴御前の胸の内を、次のように描いている。

 最後の戦いの日、義仲様はわたしに言った。「お前は逃げよ」と。
 わたしは逃げるつもりなどなかったが、「女の力を借りたとバレたら恥だから」とまで言われた。
 百年の恋も冷めた。
 わたしは一人当千の武者! 何が恥なのか!
 腹が立ったわたしは襲いかかってきた武者の首をつかみ、「では、これが最後のご奉公」と力をこめて骨をくだいた。――『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』より
【謎の美女】源平合戦の「最強の女武者・巴御前」とは何者か?イラスト:和田ラヂヲ(『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』より)

 戦場を去るように言われたにもかかわらず、敵の首をへし折るほどの激しい闘いぶりを示したという。

 巴御前のその後の消息は明らかではない。だからこそ彼女は、史実と物語のあいだに位置する存在として、いまなお語り継がれている。

(本原稿は『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』に関連した書き下ろし記事です)

巴御前(時代;平安時代/出身地:不明/生没年:不明)
平安時代末期の武将・源義仲に使えた勇敢な女武者。美貌と武勇を兼ね備え、一人で千人の敵を圧倒する「一人当千の武者」と伝えられている。――同書より