将来的に5人に1人がなると言われている「認知症」。運や遺伝によってなると考える人も多いが、じつは意外な習慣によって、そのリスクを高めてしまうことがわかった。その影響は20代から始まっているとも言う。
その事実を紹介したのが、オックスフォード大学の研究員として世界的難病の治療法の発見に貢献し、現在は医師としても活躍する脳と糖の専門家である下村健寿氏の著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』だ。認知機能を崩壊させる「黒幕」の正体や、そのメカニズム、そして脳を守るための習慣を紹介した同書から、一部を抜粋・編集し紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
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そのスマホゲームは、本当に「面白い」のか?
寝る前にスマホゲームを開く。
通勤時間にSNSをチェックする。
ちょっとした空き時間に、ついスマホを触る。
こうした行動は、いまや多くの人にとって当たり前の習慣になっている。
なかには「頭の体操になる」「気分転換になる」と考え、スマホゲームを続けている人もいるだろう。
しかし、元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家である下村健寿氏は、著書『糖毒脳』の中でスマホアプリ、とくにゲームの中毒性について警鐘を鳴らしている。
多くの無料ゲームやSNSは、行動経済学や心理学を駆使し、脳の報酬系を過剰に刺激するように設計されています。それはオンラインギャンブルのようなもので、予測できない報酬(ガチャやランダムな演出)が与えられるたびに、脳内では快楽物質であるドーパミンが大量に放出されます。
――『糖毒脳』より引用
つまり、スマホゲームは「面白いから」ハマってしまうのではない。
そして、この刺激に慣れた脳は、より強い刺激を求めるようになる。
この過剰な刺激に慣れきった脳は、日常の穏やかな喜びを感じにくくなり、より強い刺激を求めてスマホを手放せなくなる依存のループに陥ってしまいます。
――『糖毒脳』より引用
気づかぬうちにのめり込み、やめようと思ってもやめられなくなるように設計されているのだ。
海馬が縮小するという衝撃的な報告
さらに下村氏は同書のなかで、こうした「スマホ習慣」が認知症リスクにつながると指摘している。
実際、「長時間のスマホ使用が脳の海馬の体積を減少させる」という衝撃的な報告もあります。これはアルツハイマー型認知症の初期変化と驚くほど共通しています。
――『糖毒脳』より引用
スマホがもたらす過剰な刺激によって分泌され続けるストレスホルモン「コルチゾール」が、デリケートな神経細胞を傷つけ、脳内に小さな炎症の火種を撒き散らしている実態があると報告されていると、同書は述べている。
海馬は、記憶を司る重要な部位だ。
この部分が縮小するというのは、認知機能の低下につながる可能性がある。
さらに、スマホの影響はそれだけではない。
認知症の要因の1つに、脳内に溜まる「アミロイドβ(ベータ)」という老廃物の存在があります。
本来、私たちの脳は睡眠中に、この老廃物を洗い流す「大掃除」をするのですが、その機能さえもスマホは妨げてしまいます。
――『糖毒脳』より引用
寝る前のスマホ。
夜遅くまでのゲーム。
終わりのないスクロール。
こうした習慣が、脳の回復の時間を奪い、私たちの認知機能を少しずつ傷つけていたのである。
(本稿は、『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容を引用して作成した記事です)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。








