その背景には、銀行の手続きが複雑だったり、手数料や条件がわかりにくかったりすると、それだけで足が遠のいてしまうということがあります。

 シンプルな料金体系のほうが実は貯蓄行動を助けます。たとえば、料金がシンプルで、申し込みも簡単、しかも給料日などに自動で少しずつ別口座に移るといった仕組みがあると、「よし、貯めよう」と気合いを入れなくても貯蓄が進みやすくなります。

 このように、貧困による心理的重圧や環境の障壁が、私たちの「貯蓄するぞ!」という気持ちを隠れたところで押し下げているのです。だからこそ、無理に「意志の強さ」だけに頼るのではなく、さまざまな環境や仕組みを変えていく方法を利用することが、賢くお金をためる鍵になります。

お金をコントロールできる人は
健康管理も得意で当然

 お金を貯めることが、あなたの幸福感に与えるさまざまな影響について解説してきましたが、実は健康にまで良い影響を与えるという研究結果が明らかになってきています。まるで、貯蓄という行動が、人生全体を良くする魔法のスイッチのようです。

 この「魔法のスイッチ」の正体を知るヒントは、「パーソナル貯蓄志向(PSO)」という概念にあります。

 これは、ライス大学のドーラキアらの研究(注4)で提唱された考え方で、貯蓄を単なる目標達成のための行動ではなく、一貫性があり持続可能な「ライフスタイル」として捉える傾向を指します。簡単に言えば、「貯めることがあたりまえ」で、生活習慣の一部になっている人のことです。

 このPSOが高い人は、ただお金が貯まるだけでなく、たとえば自分の体重や現在の運動習慣に対する満足度など、健康関連の自己評価が高く、健康面においても、よりポジティブな傾向にあるそうです。

『科学的に正しい[お金が貯まる]習慣』書影科学的に正しい[お金が貯まる]習慣』(堀田秀吾、扶桑社)

 なぜ貯蓄と健康が結びつくのかというと、1つには、お金を計画的に管理し、貯蓄が増えていくことで、心に余裕が生まれ、自己肯定感が高まるという「ハロー効果」が考えられます。もう1つは、PSOが高い人は、貯蓄だけでなく、健康的な食事や運動といった「他の領域でも良い習慣を実践する」という「クロスドメインの徳」を持っている可能性です。

 つまり、貯蓄をライフスタイルに組み込める人は、生活全般において規律正しく、ポジティブな行動を自然と選べる傾向があるのです。

 貯蓄は、単なる経済的な安心感を超えて、あなたの心と体の健康にも良い影響をもたらす、まさに「未来の自分への投資」です。今日から小さな一歩を踏み出して、賢く楽しく、心も体も健やかな「貯蓄体質」を一緒に目指してみませんか?

(注4)Dholakia,U.,Tam,L.,Yoon,S.,&Wong,N.(2016).The Ant and the Grasshopper:Understanding Personal Saving Orientation of Consumers. Journal of Consumer Research,43(1),134-155