そして驚くべきことに、それらすべてが、たった22ページという短いフォーマットの中に収められていたのです。
物語としての起承転結はもちろん本格的な医学的知識までが、極めてコンパクトな構成の中に見事に溶け込んでいました。
今あらためて考えても、『ブラック・ジャック』があの限られた紙面で、悩みを抱える主人公、それに関わる人々の価値観、そこから発生する事件の説明、そして解決、そこから生まれるテーマと豊かな物語世界を構築できていたことには、驚かされるばかりなのです。
思えば、「なぜ『ブラック・ジャック』はこんなにも面白いのか?」という疑問は、僕にとって漫画家としての原点であり、創作という長い旅路の中で何度も立ち返る「問い」だったような気がします。
日本最古の漫画『鳥獣戯画』が
秀逸である理由
日本最古の漫画とされることもある『鳥獣戯画』。この絵巻には、見る人を惹きつける独特の魅力があります。
それは「情報量が少ないのに、躍動感がしっかり伝わる」という、一見矛盾するように思える特徴を持っているからだと思います。
ウサギやカエル、サルといった動物たちが、人間のように相撲をとったり、転んだり、逃げたりする様子が、ほんの数本の線で生き生きと描かれています。細かい説明や背景がなくても、私たちはその動きや感情を自然に感じ取ることができます(図2-4)。
同書より転載
なぜそんなことが可能なのでしょうか?その理由の1つは、絵の中の動きや表情が、私たちの頭の中にある「プロトタイプ」をうまく利用しているからだと考えます。
『鳥獣戯画』の動物たちは、そうしたイメージにぴたりとはまる「線の動き」を使って描かれているため、少ない情報でも私たちは「伝わる」と感じるのです。







