2018年に新たな在留資格、「特定技能」を創設するための入管法の改正が行われた際、安倍晋三総理は10月29日、衆院本会議での答弁として「いわゆる移民政策をとることは考えていない」とし、「国民の人口に比して一定程度の規模の外国人や家族を期限を設けず受入れることで、国家を維持する政策をとることは考えていない」と述べ、今回の改正はその意味で移民政策ではないと答えています。
この答弁をもとに2024年の育成就労の創設の際も同じ説明が繰り返されているのです。
移民アレルギーへの配慮が
具体的な政策を妨げている
ここで注目すべきは政府が主張する「いわゆる移民政策」の中身です。通常、移民政策とは、受入れ国に役立つ外国人を職能や言語能力を勘案の上で選択して受入れ、受入れ後には言語教育、生活面での支援などを含む統合政策をとることを意味します。それが日本以外の先進国が行っている移民政策の主要な内容です。
では日本政府の言う移民政策、つまり外国人を「国民の人口に比して一定程度の規模」、「期限を設けず受入れる」、「国家を維持する政策」とは何を意味するのでしょうか?
「国民の人口に比して一定程度の規模」とは具体的にどの程度なのか?常識的に相当大人数の受入れであることは推測できますが、これについて具体的な数字は論議されていません。
『移民1000万人時代 2040年の日本の姿』(毛受敏浩、朝日新聞出版)
技能実習制度を廃止して創設された新たな在留資格「育成就労」は、永住につながる特定技能への前段階として創設されました。特定技能の受入れ数を政府は5年間で上限82万人としていますが、日本の人口に影響を与えるレベルの人数とも考えられます。
次の「期限を設けず受入れる」とは、永住を想定した受入れということでしょう。超高度な人材であればまだしも、入国時から永住権を与えて受入れ制度をとる国はまれでしょう。
世界的な人手不足の中で、期間が短縮される傾向にはあるものの、多くの国では通常は数カ月あるいは数年の在留期間の制限付きで入国を許可した後、安定した生活をしている、社会に貢献をし得る人材であることを確認の上で、永住や帰化が認められるのがふつうだと思います。
さらに「国家を維持する政策」とはおおげさな表現ですが中身はあいまいです。たとえば外交政策も国家を維持する政策でしょうし、また食糧政策もエネルギー政策も、国家を維持する政策と言えるでしょう。
つまり政府が言う「移民政策」とは極めてあいまいで政策と言えるような中身がありません。
移民アレルギーへの配慮として「移民政策はとらない」というお題目を掲げるだけでは、責任回避と言わざるを得ないでしょう。







