イスラエルの国旗を背にした覆面の人物写真はイメージです Photo:PIXTA

イスラエル軍の戦死者のうち、約45%が宗教的な使命感を強く持つ兵士たちだとされる。この偏りは、単なる偶然ではない。軍の最前線には、「約束の地」を取り戻すことを自らの役割と考える人々が集まりつつある。そうした価値観は、戦い方だけでなく、国家の判断にも影響を及ぼしている。なぜイスラエルはガザから撤退できないのか。※本稿は、イスラーム研究者の池内 恵編著『「世界を動かす宗教」講義』(PHP研究所)のうち、国際政治学者・立山良司氏による執筆部分の一部を抜粋・編集したものです。

イスラエルの軍も政府も
旧約聖書に動かされている?

 2014年のハマスとの戦争では、陸上戦の開始を命じる際に、司令官が「諸君はイスラエルの神を罵り、誹り、憎悪するテロリストとの戦いに選ばれた」と、部下の宗教意識を煽るような命令書を出し批判された。

 今回のガザ戦争でも、戦死したイスラエル兵士の45%は宗教シオニスト(編集部注/世界に離散したユダヤ人が「約束の地・パレスチナ」へ移住することを、神による救済プロセスの始まりと解釈する人々)との推計があり、イスラエルのユダヤ人に占める宗教シオニストの割合が10%強であることをふまえると、宗教シオニストの将兵がより危険な前線での戦闘に多く従事していることを示唆している。

 宗教シオニストら大イスラエル主義勢力が最も積極的に取り組んできたのは、国際司法裁判所(ICJ)が「事実上の併合」と批判した、占領地での入植活動である。入植地や入植者が増えれば増えるほど、占領地からの撤退は不可能になるからだ。

 しかもイスラエル政府としても、「約束の地」の一部とされる占領地への入植はシオニズム思想の実践と見なされ、原理的には否定できない。