不良留学生や逃亡実習生の犯罪が増加写真はイメージです Photo:PIXTA

日本貿易振興機構(JETRO)によると、現在日本に在留するベトナム人は約57万人で、2020年には外国人労働者の数で中国を上回り1位となった。それに伴いベトナム人の犯罪が多発しているが、こうした事態を招いた原因はどこにあるのか。外国人犯罪の実態と、その裏側に迫る。※本稿は、安田峰俊『「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。なお、本書は2021年3月にKADOKAWAより刊行した単行本を加筆修正の上、新書化したものです。

不良留学生や逃亡実習生の犯罪が増加

 近年、在日ベトナム人に関係する社会問題は、大きくふたつに分けられる。

 ひとつは、彼らの多くが従事している労働環境の過酷さや構造的な中間搾取、低賃金、それらを苦にした逃亡などだ。これらは主に、技能実習制度や留学制度をはじめとした日本の外国人労働制度の欠陥や、日本社会の企業組織や労働現場のありかたに主たる原因がある。

 いっぽう、もうひとつの問題は、不良化した留学生や逃亡した技能実習生らによる犯罪の増加だ。

 これらの「犯罪」には、偽造身分証や車両の入手、さらには自己消費目的での家畜の泥棒といった、生きるうえでやむを得ず選択したと言えなくもない行為もあるが、なかには最初から盗品の転売を目的とした組織的な窃盗や、借金の督促のための同胞へのリンチなど、明白な違法行為を自身の積極的な意志によっておこなっている例もある。

 私はもともと中国分野を専門にするライターだが、2017年の末ごろから、こうした在日ベトナム人たちの現状を追いかけるようになった。