本当に仕事ができる人は
決して“上から目線”ではない

 それは「私たちにリスペクトや関心を示してくれること」です。

 多くの美容師はデスクワークの経験が少ないため、中にはWordやExcelを操れない人や、SlackやZoomのマナーを知らない人もいます。企業でお勤めの方からすると、ある種「世間知らず」とも言えるかもしれません。ですが、ビジネスの世界で活躍されている方は、年齢を問わず、決して“上から目線”ではありません。

 そのうえ、施術中はご自身の話をされるだけでなく、“こちら側”に関心を持って質問してくれます。時には次のように、美容師の仕事や美容業界についての踏み込んだ質問をいただくこともあります。

「ハサミは何種類ほど使い分けていますか?」
「フリーランスの美容師と、企業に所属する美容師では、働き方がどう違いますか?」
「成長が早い若手とそうでない子の差は、どこにありますか?」

 内容はライトなものからマジメなものまで多岐にわたりますが、核心をつく鋭い問いかけに、私たち自身が仕事のヒントをいただくことも少なくありません。

 特に印象的だったのは、あるお客様からのこんなご質問です。

「オフィスの一角や、コワーキングスペースでカットはできますか? 実現すれば、忙しいビジネスパーソンに絶対ウケると思うんです」

 実際には、このアイデアをそのまま形にするのは容易ではありません。美容室の運営は公衆衛生に関する法律で厳しく規制されており、原則として美容室以外での施術は認められていないためです。

 それでも、顧客のニーズをもとに「こんなビジネスチャンスがあるのではないか」と発想を広げる姿勢は、私自身にとって非常に勉強になるものでした。

「あなたに関心があります」というスタンスと、その振る舞いから伝わるリスペクト。これらこそが、仕事相手の能力を引き出し、組織として結果を残せる「優秀な人」の条件なのだと感じます。