誕生から20年目の「古参兵」、デリカD:5

 三菱デリカD:5。この車が世に出たのは今から19年も前、2007年1月のことだ。初代iPhoneが発売され、防衛庁が防衛省に改組され、ZARDの坂井泉水さんが亡くなった年である。総理大臣は故安倍晋三氏。サブプライムローン問題がじわじわ広がり始め、翌年のリーマン・ショックで世界経済を根底から揺さぶることになる「激動の幕開け」の時期だ。

 あれから19年(綾小路きみまろ調)。デリカD:5は今年で20年目に突入した。何しろ19年である。世の中は大きく変わった。新聞雑誌が衰退し、スマートフォンが世界を覆い尽くし、SNSが社会構造を変えた。EVだハイブリッドだ自動運転だと、クルマも大きく変わった。「100年に一度の大変革期」とも言われている。

 それでは国内のミニバンはどうか。トヨタのアルファードは3代目になった。ホンダのステップワゴンも2回フルモデルチェンジした。日産のセレナもまた然り。他社製品はすでに2周目、3周目に入っている。だがデリカはフルモデルチェンジを一度も行っていない。周回遅れもいいところだ。

 そんなデリカも、2019年には大幅なビッグマイナーチェンジを行っている。顔つきもインテリアも大きく変わった。しかしプラットフォームは2007年のデビュー時の「まま」だ。昨年には再度のモデルチェンジが実施された。ただし、あくまでも、またしても、「マイナーチェンジ」である。プラットフォームは変わらない。

「またですか」と言いたい。「そろそろ変えないの?」と問い詰めたい。

 だが当の三菱はどこ吹く風だ。なぜか。コストの掛かるフルモデルチェンジなどせずとも、デリカはキッチリ売れ続けているからだ。いや、「売れている」どころの騒ぎではない。2025年度は、何と過去最高の販売台数を記録している。18年目のクルマが、販売記録を更新したのだ。

「代わりがいない」唯一無二のミニバン

 古い設計のクルマがなぜ売れるのか。売れ続けるのか。

 答えは極めてシンプルで、「代わりがいない」からだ。

 スライドドア付きの3列シートミニバンは他にいくらでもある。だがそこに「本気の4輪駆動」という条件を加えると、選択肢はデリカしかない。唯一無二のミニバン。それがデリカD:5だ。

 スキー場への凍結した山道。キャンプ場の奥にある、ぬかるんだ未舗装路。豪雪地帯の朝、除雪車が来る前に家を出なければならない日常。「デリカでなければたどり着けない場所」が、この国にはいくらでもある。

デリカでなければたどり着けない場所がある(広報写真)デリカでなければたどり着けない場所がある(広報写真)

 かくもオイシイ市場に、他社はなぜ参入しないのか。トヨタは?ホンダは?ニッサンは?指をくわえて見ているだけなのか。この疑問は開発者インタビューの際にぶつけてみよう。何しろ19年である。自己分析も十分にできていよう。