「筋肉が全てを解決する」と聞けば、さすがに言い過ぎではないかと思う人も多いだろう。仕事のプレッシャーや人間関係、将来への不安――人生の悩みはそんなに単純ではないはずだ。では、なぜそこまで言い切れるのか。医師で老年医学・栄養科学の専門家であるガブリエル・ライオン氏が書き、世界20か国以上で続々刊行されている『筋肉が全て━━健康・不老・メンタル、人生のすべてが変わる唯一の方法』からヒントを紹介しよう。(ダイヤモンド社書籍編集局・三浦岳)
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筋肉は「炎症」を抑える
仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、あるいは年齢とともに増える身体の不調。私たちは日々さまざまな問題に直面し、その解決策を求めて思い悩んでいる。
しかし、医師で老年医学・栄養科学の専門家であるガブリエル・ライオンによる『筋肉が全て』は、そうした不調や不安に対して、もっと直接的で、科学的根拠に基づいたアプローチを提示している。筋肉こそが、私たちの心身の状態を大きく左右する重要な要素だというのだ。
なぜ、そこまで言えるのか。同書の内容を踏まえると、その理由はたった一言に集約できる。
「筋肉は身体と脳の両方に大きく影響するから」
私たちは不調を感じると、すぐに薬やサプリメントに頼ろうとする。しかし、そうした対処療法だけでは見落とされがちな重要な視点がある。それが「筋肉」の役割だ。
筋肉は単に身体を動かすためのエンジンではない。筋肉は、私たちの体内で代謝を調節し、病原体と戦う免疫システムを支え、全身の炎症を抑える強力な「内分泌器官」なのだ。
筋肉を適切に鍛えることは、肥満や糖尿病、さらにはがんや心疾患といったあらゆる病気から身を守る「天然の鎧」を自らの体内につくり出すことに等しい。
筋肉は「メンタル」にも効く
さらに重要なのは、筋肉が解決するのは身体の不調だけではないという点だ。
筋肉が収縮すると「マイオカイン」という物質が分泌され、これが血液に乗って脳に直接働きかけ、学習能力や記憶力を向上させ、幸福感をもたらす。
そして、ストレスに苛まれ、ネガティブな思考のループから抜け出せないとき、著者は頭で思い悩むのをやめ、身体からのアプローチをとるよう強く勧めている。
ランニングやバイク・スプリント(固定式自転車を短時間全力で漕ぐ運動)、腕立て伏せ、腹筋運動、あるいはエアスクワットを何回か行うだけで目覚ましい効果がある。身体を使って心をコントロールするのだ。
運動によって身体を疲労レベルまで追い込めば、それまで自分を振りまわしていた思考はどこかに行ってしまい、自分が思考をコントロールし始めていることに気づくだろう。心が沈んだときは身体を動かそう。――『筋肉が全て』より
悩みを頭の中だけで解決しようとするのには限界がある。しかし、息が上がるほど身体を限界まで動かせば、自分を振り回していた思考は強制的にシャットアウトされる。その瞬間、自分自身が再び思考と感情の主導権を取り戻していることに気づくはずだ。
筋肉は、身体を内側から守り、脳の機能を高め、折れない心をつくる「最強の薬」である。
人生の壁にぶつかったときこそ、頭で考える前に、まずは身体を動かそう。筋肉を鍛え続ける限り、私たちはいつでも困難を乗り越え、人生の舵を握り直すことができるのだ。
医師(DO)
イリノイ大学で栄養科学の学部課程を修了後、セントルイス・ワシントン大学において老年医学・栄養科学の臨床・研究フェローシップを修了。健康、パフォーマンス、老化、疾病予防におけるタンパク質の種類および摂取量の実践的応用に関する分野の専門家、教育者として活躍している。筋肉についての最新研究を網羅した本書は全米で大きな話題を呼び、ニューヨーク・タイムズベストセラー、ウォール・ストリート・ジャーナルベストセラー、USAトゥデイベストセラーとなり、世界各国での刊行が続いている。







