「心理的安全性を追求しているのに、チームがうまくいかない」。近年、さまざまな企業の現場リーダーのなかに、そのような悩みをもつ人が増えています。しかし、「心理的安全性」を追求することが間違っているわけではありません。問題なのは、「視野」が狭くなってしまっていることなのです。それは一体どういうことか? この記事では、『なぜ、あなたのチームは疲れているのか?』の著者・櫻本真理さんが、チーム状態をよくするために必要不可欠な「ものの見方」を伝授します。

「心理的安全性」に取り組んだチームが、なぜか壊れていく理由Photo: Adobe Stock 写真はイメージです

「心理的安全性」でチームが疲弊する!?

 近年、「心理的安全性」は組織論の重要キーワードとして定着しました。

 エイミー・エドモンドソン教授の研究をきっかけに、Googleが「最も生産的なチームの条件」として取り上げたことで、一気に広まったのです。

 一方で、「心理的安全性に取り組んでいるのに、なぜかチームは良くならない」という相談が、さまざまなリーダーから私のもとに届くようになりました。

 リーダー自身がご機嫌であることを意識し、メンバーとの1on1を定期的に行って、メンバーの失敗を許容するルールをつくる……。そのような努力を通じて「心理的安全性」を高めたとしても、それによって成果が生まれるどころか、かえってチームの「心理的リソース」を消耗させる結末に終わってしまう。リーダー自身が疲弊して燃え尽きてしまったり、チームが崩壊してしまったりして、以前よりも状況が悪くなってしまうのです。

 なぜ、そんなことが起きるのでしょうか?
 私なりに、さまざまなケースをじっくりと検証した結果、「心理的安全性」を高めようとすりリーダーの取組みそのものが間違っているわけではなかったことがわかりました。ただ、彼らが「見ている範囲」が少し狭かったのです。

「心理的安全性」が解決するのは「関係性の消耗」

 ここで、「心理的安全性」と「心理的リソース」という二つの概念を整理したいと思います。

「心理的安全性」とは、「このチームで発言や失敗をしても、批判・否定されたりしない」という信念のことです。この心理的安全性が損なわれているとき、メンバーは言葉を選び、お互いの顔色をうかがい、本音を飲み込むことに多大な「心理的リソース」を使うことになります。

 一方、「心理的リソース」は、個人の中で増減する心理的な資源のことです。睡眠、関係性、自己肯定感、将来への希望――そういったものから日々補充されたり、消耗したりする、心のエネルギーそのものです。「面倒くさいけど、やるぞ」と自分を奮い立たせるときに使っている、あのエネルギーと言ってもいいでしょう。そして、この「心理的リソース」が満たされているチームは活性化し、「心理的リソース」を消耗しているチームは崩壊へと向かっていくわけです。

 つまり、チームの「心理的安全性」が低いときには、関係性の中で「心理的リソース」が奪われやすくなっている状態であると言えます。

 だから、「心理的安全性」を高める取組みには意味があります。「心理的安全性」を高めることによってメンバー同士の関係性をよくすることは、チームの「心理的リソース」を守ることに直結するからです。

 問題は、そこで思考が止まってしまうことにあります。