人はなぜ自ら危険に近づいてしまうのか写真はイメージです Photo:PIXTA

人間の体は、驚くほど合理的に設計されている。にもかかわらず、私たちは自分の体の状態や衰えを正しく認識できていない。その小さなズレが、日常の中でリスクを積み重ね、ある日突然、命を奪うことがある。数多くの異状死と向き合ってきた法医学者が、「人はなぜ自ら危険に近づいてしまうのか」という問いに迫る。※本稿は、法医学者の高木徹也『私たちはなぜ死ぬのか 法医学者が語る「永く、よく生きるための技術」』(CEメディアハウス)の一部を抜粋・編集したものです。

脳と心臓の血管トラブルは
どうして起きやすいのか

 脳につながる血管は前に2本、後ろに2本と計4本あります。4本の血管は脳の下で合流して再び分岐し、仮に1本の血管が詰まってダメになったとしても、血流が滞らないような安全策が施されています。じつによく考えられています。まさに、神様にしかなし得ないワザです。

 心臓に血液を供給する冠状動脈も工夫が凝らされています。心臓はご存じのとおり、ポンプのように収縮と拡張をくり返しながら全身に血液を送り出しますが、心臓は収縮すると、力こぶが硬くなるのと同じように心筋そのものが硬くなります。このとき、心臓内部を走る血管が圧迫され、冠状動脈の血流は低下します。

 そこで冠状動脈は、心臓が拡張するタイミングで効率よく血液を受け取る構造になっています。心臓が血液を送り出したあと、血液が逆流しないように弁が閉じることで生まれる圧を利用し、心臓のすぐそばにある冠状動脈へ血液が流れ込む仕組みになっているのです。この仕組みのおかげで、血液を流すために無理な圧をかけずに済むのです。

 しかし、神様は人体の設計において致命的な「見落とし」を1つしてしまいました。それが動脈硬化症に代表される「生活習慣病」です。

 動脈硬化症に陥ると、せっかく効率よく血液を流すことができるように設計された脳の血管の合流部や分岐部で、流れが乱れたり圧のバランスが崩れたりしてしまいます。結果として血管に瘤をつくり、脳血管疾患を引き起こしてしまうのです。