防衛医大教授痴漢冤罪事件での最高裁判決や「那須補足意見」には、大きなインパクトがありました。
映画『それでもボクはやってない』(編集部注/痴漢冤罪を題材とした2007年公開の周防正行監督作品)が喚起した世論と相まって、痴漢事件については「人質司法」(編集部注/罪を認めない被疑者や被告人に、自白を引き出す目的で長期間の勾留を継続)が運用されなくなっていき、秋山賢三弁護士も裁判所の対応の変化を歓迎していました。
しかし、それ以後も依然として、「無罪推定」「合理的な疑いを超えた証明」という刑事裁判の原則を逸脱した判決は出ています。
たとえば、2011年に起きた三鷹バス痴漢冤罪事件。走行中のバスの車内で女子高生のスカートの上からお尻を触ったという身に覚えのない罪で、東京都三鷹市の中学校教諭Tさん(当時27歳)が、東京都迷惑防止条例違反の現行犯で逮捕・起訴された事件です。
逮捕直後に警察署が実施した鑑定では、Tさんの手指から「触った」とされる女子高生が着用していたスカートの繊維は検出されなかったにもかかわらず、警察官は自白を強要し、検察官は「認めないなら出さない」と「人質司法」をちらつかせました。
年末に逮捕されたTさんは警察の留置場で年を越し、逮捕から28日後に、250万円の保釈金を払ってようやく留置場から出ることができました。
弁護士が粘り強く検察と交渉し、バスの車載カメラの映像を開示させて分析したところ、「触った」とされる時間帯に、Tさんがリュックサックを身体の前(お腹側)にかけて立ち、左手で吊り革をつかみ、右手で携帯電話のメールを打っている姿が記録されていました。
「可能性」だけで有罪という
耳を疑う不合理な判決
同時刻に相手に送られたメールの通信記録も残っています。「痴漢」の証拠は、女子高生の証言以外にはありませんでした。
ところが、13年5月に下った一審・東京地裁立川支部の判決は、求刑通り罰金40万円の有罪でした。







