公務員の危機#29海上自衛隊が創設70周年の節目の2022年に実施した国際観艦式(写真提供:海上自衛隊)

中央省庁の労働環境が「ブラック霞が関」と呼ばれているのは、一部の国家公務員の長時間労働が常態化しているからだ。一方で、時代の変化によって不要になった規制や制度を温存するために、惰性で仕事をしている部署は少なくない。特集『公務員の危機』の#29では、ダイヤモンド編集部の独自アンケートで官僚ら212人に聞いた要らない「仕事」「規制」「既得権」を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

自衛隊の観閲式、行政事業レビューは不要
外為特会の残高約200兆円は「多過ぎる!」

「全ての政策は既得権を生み出す。別の観点から(既得権者の)不利益になる政策の変更をしようとするときに問題として顕在化する。(既得権を守ろうとする勢力に)対抗するには理論武装が必要だが、忙し過ぎてその時間をつくれない。結果として、そのまま放置される。2年辛抱すれば、行政官は異動で無罪放免となる」

 これは、ダイヤモンド編集部が独自に実施した公務員・日銀アンケート(下図参照)における人事院元職員の回答である。この回答には、中央省庁が無駄な仕事を削減し、重要な仕事にリソースを再配分することの難しさがよく表れている。

 霞が関は若者から見放されつつあり、国家公務員を志願する人材は減少している。おまけに、中央省庁の職員の人口ピラミッドはいびつになっており、ボリュームゾーンの50~60歳が退職すれば、一部の職場では人員不足に陥る懸念もある。

 他方で、時代の変化によって不要になった規制や制度を温存するために非生産的な仕事をしている職員がいるのも事実だ。そもそも民間活力をそぐ規制は、よほどの必要性がない限り撤廃するのが望ましい。

 そこで、ダイヤモンド編集部は同アンケートで、国家公務員と日本銀行関係者に、不要だと思う「仕事」「規制」、見直すべき「既得権」を聞いた。

 その結果、政治家からの質問に対する回答の作成といった国会対応は生成AI(人工知能)に代行させ、国家公務員の負担を軽減するべきだとの意見が複数あった。また、自衛隊の式典や外国為替資金特別会計(外為特会)などについて抜本改革を求める声が多数上がった。次ページでは、普段あまり聞くことができない官僚らの本音を明らかにする。