どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。

なぜ百貨店には「休憩スペース」や「カフェ」が各階にあるのか?Photo: Adobe Stock

「もう歩けない…」の正体は、
足の疲れではなく「脳の疲れ」

 大きな百貨店を数時間歩き回り、いくつかのフロアを見た後に、ふと「もう今日はこれでいいか」「また今度にしよう」と、買い物を切り上げてしまった経験はありませんか?

 実は、この「買い物の終了」を決めているのは、必ずしも体力の限界ではありません。

 次々に商品を見て、比較し、「買うか買わないか」を決断し続けたことで、脳のエネルギーが枯渇してしまった状態なのです。

 百貨店が各階に休憩スペースやカフェを設けているのは、単なるサービスではありません。

 お客様の「脳」をリフレッシュさせ、再び「買う決断」ができる状態に戻すための、非常に重要な販促戦略なのです。

「決断には「ガソリン」が必要
(認知負荷の蓄積と回復)」

 人は何かを比較・判断するとき、脳の処理リソースを消費します。

 心理学では情報処理の負荷を「認知負荷」と呼び、これが蓄積すると判断の質が低下したり、選択そのものを回避したりする傾向があることが知られています。

 買い物を続けると、この負荷がどんどん蓄積し、「決断疲れ」に似た状態に陥ります

 ・「選ぶのが面倒になる」
 ・「考えるのが嫌で、何も買わずに帰る」

 こうした離脱を防ぐために、座る場所や甘いもの(カフェ)を提供し、認知資源を回復させます。

 エネルギーがチャージされたお客様は、再び「新しい商品」に興味を持ち、「あと一品」の決断ができるようになるのです。

「同伴者」を疲れさせない戦略
(環境デザイン)

 もう一つの重要な狙いは、買い物に付き合っている「同伴者(夫や子ども)」の離脱を防ぐことです。

 本人がまだ買いたいと思っていても、同伴者が「もう疲れた、帰ろう」と言い出せば、そこで買い物は終わってしまいます。

 ・ソファに座って待てる場所がある
 ・子どもが遊べるスペースがある

 これらは、同伴者のストレスを軽減し、結果として「買い物をしている本人」の滞在時間を最大化させ、買上点数を押し上げるための環境デザインなのです。

他のお店でも使える
「リフレッシュ空間」設計

「決断を助けるための休息」は、どんなお店でも応用可能です。

 ・アパレルショップ:試着室の近くに、付き添いの人がゆったり座れる大きなソファを配置する
 ・家具・ショールーム:商談スペースの椅子をあえて最高級のものにし、お客様に「リラックス=決断の余裕」を与える
 ・住宅・自動車販売:長時間の打ち合わせの途中で、あえて「お茶とお菓子の時間」を挟み、次の決断へと備える

まとめ

 百貨店に休憩場所が多いのは、

 ・「認知負荷の蓄積」を和らげ、脳の「決断疲れ」による離脱を防ぐ
 ・「滞在時間の延長」を促し、フロアごとの買上チャンスを増やす
 ・環境デザインにより、同伴者の不満を解消して買い物を継続させる

 という、お客様の「決断する力」を最後まで維持させるための、計算された販促の仕掛けなのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。