どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。

なぜ住宅ショールームや家電量販店では、あえて「標準仕様」と「こだわり仕様」を並べて見せるのか?Photo: Adobe Stock

「普通」を知ることで、
「良いもの」が欲しくなる理由

 住宅展示場やショールームなどで、標準的なグレードの設備と、最新技術を詰め込んだ最高級グレードが隣り合わせに展示されているのを見たことはありませんか?

 最初は「標準で十分だ」と思っていても、実際に両方を見比べ、触れ比べているうちに、「せっかくなら、こっちのほうがいいな」と、いつの間にか予算を上げてしまった経験があるはずです。

 実は、この「比較展示」は、商品の価値をお客様の主観的な「感覚」から「確信」へと変え、自然に商品単価をアップさせるための、非常に強力な販促戦略なのです。

「差」が価値を明確にする
(対比効果)

 人は、一つの商品だけを見ても、その良し悪しを正確に判断することができません。

 しかし、異なる二つのものを比較したとき、その「差」が判断の基準となります。これは、「対比効果」を利用した心理誘導です。

 標準仕様を先に見せることで、上位仕様の質感や機能の高さが、より際立って感じられます

 お客様の頭の中にある価格の基準点が、比較によって「価値」の評価へと結びつくため、高額なアップグレードが「差額に見合う価値がある」と納得されやすくなるのです。

未来の満足を「先取り」させる
(心理的所有感)

 もう一つの理由は、上位モデルを使うことで得られる未来の生活を、より具体的に想像させることです。

 実際に触れて「使い心地」の差を体感すると、人はその上位モデルを「もう自分のもの」であるかのように感じ始めます。これを「心理的所有感」といいます。

 一度「自分のもの」という感覚が芽生えると、それを手放すことへの抵抗感(エンダウメント効果)が生まれ、「後悔したくない」という損失回避の心理からも、より良いものを選び取る決断をするのです。

他のお店でも使える
「比較体験」設計

 この「差を可視化する」手法は、高額商品だけでなく、あらゆるサービスで応用可能です。

 ・寝具店:標準的な枕と、オーダーメイドの高機能枕を並べ、その場で寝心地の「差」を体験してもらう
 ・食器店:通常のワイングラスと、香りが引き立つ高級グラス。あえて並べて提供し、テイスティングという体験を通じて商品の価値を実感してもらう
 ・クリーニング店:「通常の仕上がり」と「職人仕上げ(撥水・防虫加工)」のサンプルを並べて提示し、一目でわかる仕上がりの「差」を見せる

まとめ

「標準」と「こだわり」を並べて見せるのは、

 ・「対比効果」により、上位モデルの優位性を視覚・触覚的に強調する
 ・標準仕様の価格を「基準点(アンカー)」として、差額を割安に感じさせる(アンカリング効果)
 ・将来の満足感を具体的に想像させ、「良いものを使う未来」を確信させる

 という、お客様が自らの意志で「高いほう」を選択する仕組みを整えているからなのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。