税務署が見逃さない「5年の壁」、相続直前の“不動産購入”が危ない理由
本連載は、相続に関する法律や税金の基本から、相続争いの裁判例、税務調査で見られるポイントを学ぶものです。著者は相続専門税理士の橘慶太氏で、相談実績は5000人超。遺言書、相続税・贈与税、不動産、税務調査、各種手続といった観点から相続の現実を伝えています。2024年から始まった「贈与税の新ルール」等、相続の最新トレンドを著書『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』から一部抜粋し、お届けします。

税務署が見逃さない「5年の壁」、相続直前の“不動産購入”が危ない理由Photo: Adobe Stock

税務署が見逃さない「5年の壁」とは?

 本日は「相続と不動産」についてお話をします。年末年始、相続について家族で話し合った方も多いかと思います。ぜひ参考にしてください。

 相続税対策として不動産が注目されるなか、今回の改正で気になるのが、いわゆる「5年ルール」です。これは、相続や贈与の前5年以内に取得した賃貸用不動産について、相続税評価の引下げを使いにくくする見直しを指します。とくに、すでにアパートやマンションを保有し、賃貸経営を続けているオーナーにとって、「自分にも影響があるのか」「何に気をつければいいのか」は気になるところでしょう。

こんな人は要注意!

 結論からいえば、今回の見直しが強く意識しているのは、相続が近い時期に駆け込みで不動産を取得し、相続税評価を下げようとするケースです。そのため、もともと賃貸経営を継続してきた人は、過度に心配しなくてもよい面があります。ポイントになるのは、取得してからどれだけ継続して保有・運用しているかです。

 今回の改正では、5年間きちんと継続しているかどうかが大きな分かれ目になります。逆にいえば、不動産を取得してから5年たっていれば、従来どおりの割安な評価が認められる余地があります。

 注意したいのは、取得してから間もないうちに贈与したり、取得後数年で相続が発生したりするケースです。こうした場合には、これまでより相続税評価が高くなり、想定していたほどの効果が得られない可能性があります。これから不動産を活用した相続対策を考えるなら、直前になって慌てて動くのではなく、なるべく早い段階から準備し、時間をかけて運用していくことが重要です。

誤解しやすいポイント

 ここで誤解しやすいのは、「新ルールが始まる2027年1月から5年なのか」という点です。実際にはそうではなく、基準になるのは制度の開始時期そのものではなく、その不動産を取得してから何年たっているかです。たとえば、2023年1月に不動産を取得し、そこから5年たった2028年1月以降に相続が発生した場合には、新ルールの施行後であっても、従来の低い評価が適用される考え方になります。大事なのは「いつ制度が始まるか」より、「いつ取得し、どれだけ保有してきたか」なのです。

 この点を踏まえると、すでにアパートやマンションを持ち、純粋に賃貸経営を続けている人が、今回の改正の直撃を受けるとは限りません。むしろ影響が大きいのは、「相続が近そうだから急いで不動産を買う」といったケースです。そうした駆け込み取得を抑えるのが今回の改正の趣旨であり、長く賃貸経営をしてきた人まで一律に不利にするものではない、と見ることができます。

 だからこそ、オーナーにとって大切なのは、必要以上に不安になることではなく、自分の保有物件がいつ取得されたものか、相続や贈与のタイミングとどう重なるのかを整理しておくことです。

(本原稿は『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)