「わからない」を聞かず、「悪い知らせ」を隠す――その瞬間、チームの信頼は静かに崩れ始めます。上司が本当に厳しく向き合うべきは、ミスそのものではなく、自己保身を優先する姿勢です。
SNSでビジネススキルについて情報発信を行い、総フォロワー数が37万人を超え、『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』の著者である「にっしー社長」こと西原亮氏に教えてもらった、誰でも「しごでき」になれる令和リーダーの基本を本記事で紹介します。

厳しく指摘すべき2つの瞬間
本書ではこれまで、「上司は感情的に怒ってはいけない」と繰り返し伝えてきました。
しかし、これは「何をしても許される甘い上司になれ」という意味ではありません。仏のような顔をしているだけでは、組織の力はみるみる低下していきます。
チームの規律を守るために、上司として「ここは絶対に譲れない」と毅然とした態度で接するべき瞬間が2つあります。
①:「わからない言葉」をスルーしたとき
社内会議中やクライアントとの商談中、明らかに理解していないのに「なるほど、わかりました」と知ったかぶりをしてしまう部下がいます。
例えば、クライアントの要望がよくわかっていないのに適当に「わかりました」と言い、結果的にまったく見当違いの提案をしたことで、大クレームに発展するケースです。
なぜ、わからないことを「わからない」と素直に聞けないのでしょうか?
それは、「今さら聞いたら『そんなことも知らないのか』と思われて恥ずかしい、怖い」という個人の感情を優先しているからです。
あるいは、「誰かがわかっているはずだ」と他人に依存し、自分で責任を持とうとしていないからです。
「わからない」をそのままにすることは、仕事において「悪」です。
結果としてチーム全体の仕事が止まり、顧客に迷惑をかけるからです。
②:悪い知らせ(Bad News)を隠したとき
仕事において鉄則なのが「Bad News Fast(悪い知らせほど早く伝えること)」です。
ボヤのうちに報告してくれればコップ一杯の水で消せますが、隠して放置すれば大火事になります。
例えば、クライアントから「担当を変えてほしい」と厳しいお叱りを直接受けたのに、上司に報告せず隠蔽してしまうケースです。
なぜそんな重大なことを隠すのか。それは、「会社に報告したら自分の評価が下がるかもしれない」「怒られるのが嫌だ」という自己保身に走っているからです。
自分の評価を守るために、会社がクライアントを失うリスクを放置していることになります。
「個人の感情」を優先する姿勢を許してはいけない
この2つのNG行動の根底にあるものは、まったく同じです。部下が「会社(チーム)の目的」よりも、「恥ずかしい」「怒られたくない」「評価を下げたくない」という「個人の感情(自己保身)」を優先してしまっているということです。
誤解のないように言うと、人間ですから「恥ずかしい」「怒られたくない」という感情が湧くのは当然です。
しかし、「仕事においては、自分の感情を優先してはいけない」のです。
簡単な例で考えてみましょう。
「朝、布団から出たくない」「会社に行きたくない」という個人の感情は誰にでもあります。
しかし、その感情を優先して定時に出社しなくなったら、そもそも仕事として成り立ちません。これとまったく同じです。
自分を守りたいという個人の感情を優先して、会社の動きを止めたり、リスクを拡大させたりすることは、お金をもらって仕事をしているプロとして絶対にやってはいけない行為です。
怒るのではなく、冷静に「会社視点」をインストールする
この2つの瞬間において、上司は「なんで聞かなかったんだ!」「なんで隠したんだ!」と顔を真っ赤にして怒鳴り散らす必要はありません。
冷静に、部下が「個人の感情」に負けている事実を伝えてください。
「わからないことを聞くのが恥ずかしい気持ちはわかります。
でも、その『恥ずかしい』という個人の感情を優先した結果、正しい情報が把握できず、お客様への提案内容も違ったものになってしまいました。わからないことを聞くことは、仕事において必須のスタンスだということを理解してください」
「怒られたくないという個人の気持ちは痛いほどわかります。だけど、報告が遅れた結果、会社の対応も遅れ、クレームが大きくなってしまった事実があります。チームの利益よりも『自分の評価や保身』を優先してしまった結果です。プロとして、そのスタンスを今日から変えるようにしてください」
このように、「今は個人の感情が優先されてしまっているよ」と明確に言葉にして気づかせることが大切です。
組織の力を下げないためには、部下に「会社視点」をインストールさせなければなりません。
無理に怒る演技をしなくても、このロジックを丁寧に伝えるだけで、部下はハッとし、仕事への向き合い方を変えるはずです。
(本記事は、書籍『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』から一部を抜粋・編集し作成しました)














