森七菜さん主演の映画『炎上』が、公開から連日満席で話題だ。歌舞伎町・トー横に集う若者を描いた本作で監督・脚本を務めるのは、サラリーマンでありながらサンダンス映画祭で日本人初のグランプリを受賞した長久允氏。その思考法を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』から、抜粋・再構成し、作品づくりの根幹に迫る。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

脚本の教室Photo: Adobe Stock

「おもしろいものを書いてよ」そう言われたとき、勝手にアイデアが降ってきたら、苦労しないですよね。

 全然なんにも降ってこないんですけど! まじで浮かばない!

 そう悩むひとが大半なのではないかと思います。

 そんなとき、とっておきの裏技があります。

 そもそも脚本に人生のすべての時間を捧げられるほど、私も含めて、みんな人生の時間に余裕はありません。

朝から家事をして、子どもを学校に送り出して8時半。
そこから仕事場に移動して9時半。
前日夜に来ているメールの返信や契約書の読み込み、請求書の整理などをして10時半。
午前中に残された時間は1時間半。
午後はプレゼンや打ち合わせがずっとあるぞ。
夜は家のことで時間は取れない。

 となると、その日の脚本作業ができる時間はこの1時間半だけとなります。

 私はきっと恵まれているほうで、他の仕事をメインにしながら夜に脚本を書く方は、もっと酷な状況だと思います。

 だから、この1時間半でできるだけ「深く潜らなければ」ならない

没頭するために「音楽」の力を借りる

 午前10時半。ベローチェの座席に着いて、できるだけ早く、「請求書」や「クライアントさんへのメール」から意識を遠くへ飛ばし、なんの肩書きもない裸の精神状態に持っていかなければならない。

 つまり、今、必要なのは「情緒」のみ

 そういうときに、私は、音楽を使って自分の心を思春期に持っていくことを心がけています。

 思いっきり日常の細々したことから意識を遠くに飛ばせる曲で「情緒不安定」にして「感情のフタ」を外したなら、次にインスト曲を流します。

 物語の設定に入り込み、トラックにのせて、PCに言葉を打ち込みましょう。思いつくままセリフを書きなぐるのです。

 そして、音楽に合わせて読み上げて、グルーヴ感が出ているか確認しましょう。不必要な箇所の選定はあとでやればいいので、ひたすら書くのです。

 こういうのは人それぞれなので、これで潜れない人もいると思いますが、きっと自分に合ったものがあるはず。

 日常から思いっきり離れて没頭できる時間を、ぜひ意識的に作ってみてください。