サイバー攻撃、多くのシステムに簡単に侵入
一般公開は中止、政府や金融機関は対策検討

 政府や関係業界に衝撃を与えたのは、アメリカのアンソロピック社が開発した「クロード・ミトス」という新しい生成AIだ。

 サイバー攻撃で「穴」となるソフトウエアやシステムの弱点を見つける能力があまりに高いため、それが悪用されると、多くのシステムが簡単に侵入されて、多大の損害が生じる危険があるという問題だ。

 サイバー防御にも活用できるが、攻撃側の手に渡れば大きな脅威となり、とりわけ、金融機関のシステムに侵入されると、想像もできないほど深刻な問題が生じる可能性がある。

 このため、「危険すぎるAI」として、アンソロピック社はミトスの一般公開は中止し、アメリカ政府と金融機関が急きょ、対策を検討している。

 このように、新しい技術といっても、その内容が問題なのであり、「どんなAIでも、その発達が社会のために望ましい」とは、必ずしも言えない状況になってきている。

 もちろん、こうした問題は以前からあった。AIに限らず他の技術でも、新しい技術の進歩が社会を豊かにし、人々の生活水準を向上させるとは限らないからだ。

 ただし、とりわけAIが技術のあり方や、社会のあり方に関して大きな問題を提起していることは間違いない。高市成長戦略の17分野に、こうした問題意識が十分に反映されているのかどうか、疑問だ。

「マンガ」をどう考えるか?
現在の形の延長線上で発達するかは不明

 17分野のリストでは、「コンテンツ」という項目の中に「マンガ」という項目がある。少なくとも表面的に見る限り、「マンガ」という項目は、「AI」や「半導体」と同じような重要性のものとして扱われている。このようなバランス感覚が適切なものかどうかは疑問だという見方があるかもしれない。

 ただし私は、この項目が重要でないとは思わない。マンガがこれまで日本で重要な産業だったことは間違いないからだ。そして、外貨獲得のためにも多大の貢献をしてきたことも事実だ。

 しかし、マンガが重点産業として政府に指定され、政府がそれをバックアップするということになれば、将来の漫画の内容がかなり限定されたものになることは、十分に予想される。

 例えば、政府の政策を批判するような内容のマンガは敬遠されるだろう。そうした内容のマンガが、これまでの日本のマンガと同じような競争力を維持できるかどうかは、大いに疑問だ。かえって競争力を失ってしまうことは十分にありうる。

 もう一つの問題は、将来でも、マンガが現在の形の延長線上で発達するかどうかは分からないことだ。

 マンガの分野でも、AIの影響は極めて大きなものでありうるからだ。

 マンガが将来どのような形になるのかは全く予想ができないが、例えば、個人個人がAIに自分だけのためのマンガを作ってもらい、それを楽しむということも考えられる。しかもそのマンガは、これまでのような形態のものではなく、「立体図形が現れて、人間と対話する」といったような形態になるかもしれない。

 それは一人暮らしの高齢者にとっては、孤独を癒やす「特効薬」となるかもしれない。ただし、あまりに強力であるために、依存性を生む「デジタルな麻薬」となってしまい、思考力を低下させるかもしれない。