「言語化だけがすべてではない」「絵を描くように考えるのが大事」「口下手のままでも伝え方は上手になれる」など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「話し方が上手だと人生うまくいく」と思っている人が盛大に勘違いしている理由・ベスト1

「話し方が上手だと人生うまくいく」と思っている人

「コミュ力が高い人ほど成功する」

 ビジネスの世界では、そう考えられがちです。

 会議でスラスラ話せる人。初対面でも場を盛り上げられる人。
 そういう人を見ると、「やっぱり話し方がうまい人は強い」と感じる人も多いでしょう。

 しかし、『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、その考え方に疑問を投げかけています。

 本当に大事なのは、「うまく話すこと」なのでしょうか?

「話し方が下手だからダメ」は本当?

 本書の中では、こんな経験が語られています。

私は口下手です
仕事をしはじめると、うまく話せない自分を徐々に自覚するようになっていきました。
まず、就職活動。面接でもグループディスカッションでもうまく話せません。
その後なんとか就職したあとも、上司やクライアントの質問にうまく答えられません。
何度かクライアントの会食にも参加しましたが、ほとんど黙っているだけでした
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 こういう経験は、多くの人に心当たりがあるはずです。

 すると普通は、「もっと話し方を勉強しなければ」と考えます。

 ですが、それだと大事な視点が抜け落ちてしまうのです

「コミュ力不足」という前提を疑ってみる

 本書では、コミュニケーションを「個人の能力」だけで考えることに違和感を示しています。

ふつうはここで、自分のコミュニケーション能力のなさに打ちひしがれ、スキルを身につけようとするのかもしれません。
でも私は、そこで開き直りました。
スキルを素直に身につけるのではなく、「いや、そもそもこれはスキルの問題なのだろうか?」と、疑うことを選んだのです。
考えた結果、ひとつ気づいたことがあります。
それは、「コミュニケーションのあり方が、相手によって変わる」ということです。
コミュニケーションにはいつも「相手」がいます。
相手によってスラスラ話せるときと話せないときがある。
コミュニケーションの悩みなんて感じないときがある一方で、「自分がいかに話せないか、聞けないか」を痛感する場面もあります。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 ここが、とても重要な視点です。

 たしかに、同じ人でも「話しやすい相手」と「話しにくい相手」がいます

 そうだとすれば、「自分の能力が低いから話せない」と単純に決めつけるのは違うのかもしれません。

人は「距離感」で会話している

 では、何が会話のしやすさを決めているのでしょうか。

 本書では、「相手との距離感」だと語られています。

では、何がその話しやすさをつくり出しているのでしょう?
私は、「相手との距離感」こそが、話しやすさをつくり出していると考えました。
私たちは誰かと話をするとき、心や体で相手との距離を測っています。
心の距離が近い人は話がしやすくて、言葉が気軽に出てくる
心の距離が遠い人は会話が止まりやすく、気まずい沈黙になる
心の距離の近い人ばかりと過ごす時間は、ほとんどストレスがかかりません
話しやすい人とだけ話していて完結する生活です。
あとは外部を遮断して、話しにくい人を『いないもの』として扱うこともできます。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは非常にリアルです。

 どれだけ話術を学んでも、「否定されそう」「怖い」と感じる相手には、自然と言葉が出なくなります。

 逆に、安心できる相手には、多少言葉足らずでも伝わります

 つまり、コミュニケーションで本当に大事なのは、「流暢に話すこと」ではなく、「安心して話せる関係」をつくることなのです。

「話術」だけを磨くと苦しくなる

 最近は、「言語化力」が重視され、「説明がうまい人」が高く評価される時代です。

 ですが、その価値観だけを信じると、「話せない自分はダメだ」と苦しくなります。

言語化だけじゃ伝わんない』は、そこに対して、「コミュニケーションは言葉だけではない」と教えてくれます。

 口下手でもいい。
 沈黙があってもいい。

 大事なのは、「この人とは話しやすい」と思ってもらえることなのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。