「ひとつ聞きたい」「なぜだったのか」辺野古ボート事故遺族が〈2015年の研修旅行〉に抱いた疑問Photo by snaptiger

沖縄県辺野古沖で小型船が転覆し、研修旅行中だった同志社国際高校の生徒と船長が死亡した。国土交通省と内閣府は、死亡した金井創船長(71)を海上運送法違反の疑いで刑事告発した(5月22日)。亡くなった高校2年生の武石知華さん(17)の遺族は「辺野古ボート転覆事故遺族メモ」というnoteで情報発信を続けている。遺族の許可を得て、全文を転載する。(ダイヤモンド・ライフ編集部)

2015年の研修旅行
2026年5月13日 11:37

 2015年の研修旅行について、もうひとつ気になる記録がある。

 沖縄到着初日の夜にホテルでの講演があるが、そこで行われたQAでの内容についてである。

 2015年以前は、宮城喜久子氏(ひめゆり学徒隊に参加し負傷兵の手当てに当たった方)が務めることが多かった講演枠を、2015年は磯野直氏が担当している。生徒全員が対象の、研修旅行初日に行われる重要なプログラムだ。

 磯野氏は冒頭でこう述べている。

「半年くらい前に西田先生から連絡があって、沖縄タイムスを読んでいただいて話をしてほしいということでまいりました」

 と。当時学年主任だった西田現校長が、沖縄タイムス記者の磯野氏に直接オファーを入れた流れと読める。

 講演の内容は、磯野氏が手がけた連載「基地で働く」をもとにした沖縄の基地労働の歴史が中心となっている。米軍統治下の沖縄で基地労働者だった方々への取材を通して得た生の声を元に、当時の労働者の葛藤や抵抗などを時間をかけて説明をしている。一部、現政権を明確に批判する言葉が含まれることは問題だが、修学旅行向けの講演として、全体が大きく逸脱しているとは言えない。

 問題は、講演後のQAにある。


 生徒のひとりが質問した。

生徒 「当時、基地で働く人たちがベトナム戦争に反対するために武器を壊したり物資を抜いたりしていたことも、今の非合法な基地反対活動も、少なくとも合法ではないですよね。」

磯野氏 「そうしなければ気が済まなかった人たちがいる。その人たちを非合法だと責められるかどうか」。

生徒 「今の政府のやり方は間違っていると思って非合法な措置をとってもいいということか?」

磯野氏 「どういうことを非合法というのか?」

生徒 「当時の法律が正しいかどうかは別として、法律で禁じられていることをすること。おかしいと思ったら違法行為でも良いのか。」

磯野氏 「物資を壊したこと、それは間違っていると思う?」

生徒 「少なくとも、その当時の法律がある限りは。」

磯野氏 「意思表示をすることが大事なこと。バックボーンがある人たちを違法だと断ずることはなぜできないか説明してきたつもりだが」

生徒 「今も違法行為で良心を果たすことは正しいのか」

 ここで同席していた教師が「水掛け論になる」として議論を打ち切った。

「今も昔も」という問いに対して、磯野氏は「今は違う」と明確に否定せず、先生は、法と良心の関係というテーマに辿り着いた生徒の議論を打ち切った。