部下の肩を掴む上司写真はイメージです Photo:PIXTA

中年世代にとっては何気ない一言でも、Z世代の部下には「ノンデリ(ノン・デリカシー)」と受け取られてしまう――。これまでと同様の言葉がけでは、上司の意図が届きにくい時代。評価や指導の言葉が「人格攻撃」と捉えられるのは、社会構造そのものが変化したためだ。どのような発言が部下との関係を損ねるのか?Z世代の育成において有効なコミュニケーションのあり方を、世代間ギャップを専門とする社会学者が解説する。(清談社 石水典子)

なぜ中年世代の一言は
「ノンデリ」と捉えられるのか

 2025年頃に登場したといわれる言葉「ノンデリ(ノン・デリカシー)」。配慮に欠けた言動に対して使われる言葉で、Z世代の間で使われている。彼らに「ノンデリ」と見なされる発言をするとマイナスな印象を持たれるリスクがある。

 こうしたZ世代の心理を読み解くには、「デリカシー」のある言動が求められる背景を理解する必要がある。そう指摘するのは社会学者の土井隆義氏だ。

「かつて空気を読んでいない発言を『KY』と呼んでいたのは、いわば場に合った言動が求められていたからです。その傾向が進んだ結果、現在は、個人の尊重もまた、場の空気から外れてはならないという観点から考えなければならないようになってきました。若者が『ノンデリだよね』と言う言葉の裏にあるのは、『空気が読めていない』ということとともに、そのことによって『個人の存在が傷つけられた』という主張でもあるんです。場の空気から外れると、自分の居場所がなくなってしまうからです」(以下、土井氏)

 業務上の注意であっても、言い方を間違えるとZ世代から「人格否定」と捉えられてしまう。

 Z世代が心理的な配慮をより求める背景には、過労死などが社会問題として顕在化し、ワークライフバランスを重視する時代へとシフトしたためだ。加えて、時代の変化に伴い、中年世代とは異なる人間関係の価値観が生じたことがあるという。

「経済成長が見込めない時代を生きるZ世代は、どこに向かうべきか、正解のない社会を生きています。そうして、どこを目指そうかと考えたときにまず参考にするのは周囲にいる人たちです。周りを参照して意思を定めており、相手の反応も強く意識します。そのためZ世代は人間関係に大変敏感です。

 Z世代のメンタリティが繊細になったことで、労働自体ではなく、人間関係のトラブルが主流となっています。労災請求も、メンタルヘルス不調による件数が上昇しています」