脆弱な人間関係により
常に不安を感じる人たち
人間関係の志向が変わった背景に、社会構造の変化があると土井氏は語る。
「以前は組織に縛られながらも守られていた。たとえ仲がこじれても、翌日には職場や学校でまた一緒に過ごさざるを得なかったので、そこで関係修復をはかる機会もありました。しかし現代はそうした固定的なつながりは失われました。若者たちは、SNSのように自分たちで構築する流動的な人間関係の中で過ごしています。
Z世代はこうした自由で脆弱(ぜいじゃく)な人間関係の中で、常に不安を感じています。そこで自分に近い価値観の人同士で集まり、安定感を得ようとする。いまの若者は本音で踏み込んだ話をするのを避け、意見の違いがあっても深追いしません。自分の個性(人との差)を強調するより、他と同じことをしていると安心だと感じる人が増えてきています。
そうした関係が中心にあるため、自分の価値観を否定される経験に慣れておらず、違う価値観を押し付けられることに強い抵抗感があるのです」
「自分らしさを強調するより他人と同じことをしていると安心だ(16~29歳)」(青少年研究会「若者の生活と意識に関する調査」から、土井氏提供) 拡大画像表示
「さらに同じ価値観の人たちとSNSなどで24時間つながっているため、その中での同調圧力も強くなっていきます」
褒める際にも配慮が必要
みんなの前ではなく1on1で
こうした同調の時代を生きるZ世代が重視するのは、お金ではなく人間関係だ。土井氏は、あるキャリアカウンセラーからこんな話を聞いたという。
「相談に来たのは若手の営業マンでした。彼が所属する会社では営業成績を貼り出していました。成績はトップだったのですが、能力給だったことで周りからやっかみを買うため、辞職を希望したそうです。会社は対応として能力給をやめました。彼の給料は4分の1になりましたが、辞めることを思いとどまったそうです」
人との関係性の重要度がより高まったZ世代に特徴的なのは、叱るだけでなく、褒める際にも配慮が必要である点だ。若手社員に評価に関わる話をするときは、ほかの人がいる状況は避けた方がいい。
「みんなの前で褒めるような特別扱いこそ、『ノンデリ』です。Z世代も褒められれば嬉しいと思いますが、それは1on1などの時がいい。この世代にとって、周りから浮くことは大きなリスクと感じられるからです」







