【相続で大損】「節税になるから不動産」が危ない3つのワケ……制度改正、金利、価格の錯覚
本連載は、相続に関する法律や税金の基本から、相続争いの裁判例、税務調査で見られるポイントを学ぶものです。著者は相続専門税理士の橘慶太氏で、相談実績は5000人超。遺言書、相続税・贈与税、不動産、税務調査、各種手続といった観点から相続の現実を伝えています。2024年から始まった「贈与税の新ルール」等、相続の最新トレンドを著書『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』から一部抜粋し、お届けします。

【相続で大損】「節税になるから不動産」が危ない3つのワケ……制度改正、金利、価格の錯覚Photo: Adobe Stock

「節税になるから不動産」が危ない3つの理由

 本日は「相続と不動産」についてお話をします。ゴールデンウイーク中、相続について家族で話し合った方も多いかと思います。ぜひ参考にしてください。

 相続税対策というと、不動産を活用する方法を思い浮かべる人は多いはずです。実際、これまではマンションやアパートを購入し、相続税評価額を抑えることで節税につなげる手法が広く知られてきました。とくに都市部の不動産は価格も大きく、節税効果のインパクトも大きいと考えられてきたため、相続税対策の王道のように語られることも少なくありませんでした。

 ただ、今の状況を見ると、不動産を使った相続税対策は以前ほど単純におすすめできるものではなくなっています。その理由は、制度改正だけではありません。不動産価格の見え方や市場の実態、金利環境の変化などを含めて考えると、「節税になるから不動産を買う」という発想そのものを慎重に見直す時期に来ているからです。

 まず大きいのは、制度面の変化です。これまで不動産が相続税対策として注目されてきたのは、現金や預金よりも評価額を圧縮しやすいという前提があったからです。しかし改正によって、短期的に不動産を取得して相続税評価を下げようとする手法には歯止めがかかる方向になっています。要するに、相続が近いタイミングで駆け込み的に不動産を買っても、以前のようなうまみは得にくくなったということです。こうなると、「とりあえず不動産を買えば節税になる」という時代ではなくなっています。

 しかも、不動産の価値そのものについても、表面的な報道だけを見て判断するのは危険です。よくニュースなどで「マンション価格が上がっている」と報じられますが、実際にはそれが売り出し価格の話であることも少なくありません。つまり、売り手が希望している価格が上がっているだけで、本当にその値段でどんどん売れているとは限らないのです。つまり、「価格が上がっている」という見え方自体に、錯覚が含まれている可能性があるのです。大事なのは実際に成立した価格、つまり成約価格ですが、そこを見ると、すでに横ばい傾向に入っているという見方もあります。そうだとすると、「まだまだ不動産は上がる」と思って節税も兼ねて飛びつくのは、かなり危うい判断になってきます。

 さらに見逃せないのが、金利の問題です。住宅ローン金利が少し上がるだけでも、新たにローンを組める人は減ります。買い手が減れば、不動産は当然売れにくくなります。売れにくくなれば価格も支えにくくなるので、今後の金利次第では不動産価格に下押し圧力がかかる可能性があります。そうなれば、節税目的で買った不動産が、思ったような価値を維持できないということも十分あり得ます。

 もちろん、土地の価格そのものは都心と地方で大きく違います。ただ、不動産を使った相続税対策の考え方が都市部だけの話かというと、必ずしもそうではありません。たしかに土地価格はエリアで大きく変わりますが、建物は同じグレードのものを建てるなら、都心でも地方でも建築費の考え方は大きく変わらない面があります。つまり、「地方だから安全」「都市部だから有利」と単純に言い切れるものでもないのです。不動産による節税は、地域差だけで決まるほど単純ではありません。

 こうして見ると、不動産を使った相続税対策が以前ほどおすすめしにくくなっている理由は、ひとつではありません。制度改正で節税効果が縮み、市場価格も報道ほど強気一辺倒ではなく、さらに金利上昇で今後の需要にも不透明感がある。こうした要素が重なっている以上、「相続税を減らしたいから不動産を買う」という判断は、かなりリスクのあるものになってきています。

 不動産そのものが悪いわけではありません。住みたい場所に住むために買う、もともと持っている土地を活用する、安定した賃貸需要を見込んで長期で運用する。そうした目的が明確であれば、不動産を持つ意味は十分にあります。ただ、少なくとも「節税になるから」という理由だけで手を出すには、いまの環境はあまりに厳しくなっています。

(本原稿は『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)