「言語化だけがすべてではない」「絵を描くように考えるのが大事」「口下手のままでも伝え方は上手になれる」など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「相手によって態度を変えるな」と言う人
「誰に対しても同じ態度で接しましょう」
これは、一見すると正しい言葉に聞こえます。
たしかに、相手によって露骨に態度を変える人は、あまり良い印象を持たれません。
上司には愛想がいいのに、後輩には冷たい。そういう人を見ると、「感じが悪いな」と思うでしょう。
しかし、『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、「相手によって態度が変わるのは、むしろ自然なことだ」と語られています。
人は「距離感」によって話し方を変えている
本書では、こんな例が紹介されています。
「青のり」です。
目の前の人の歯に青のりがついているとき、それを指摘できるかどうか。
相手が取引先の担当者なら言わないかもしれません。
でも、仲の良い友だちや家族なら「歯に青のりついてるよ」と指摘できます。
やはり、人は相手によって、自然と態度を変えているということです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは非常にわかりやすい例です。
たしかに、親しい相手には自然に言えることでも、距離のある相手には言えません。
つまり、人は「相手によって態度を変えている」のではなく、「距離感に応じて自然にコミュニケーションを変えている」のです。
「態度を変えない人」なんていない
本書では、さらにこう続きます。
はじめてデートしたカップルは会話がぎこちない。
何を話したらいいかお互いに探り合っているからです。
たこ焼きを一緒に食べて青のりがついていたとしても、指摘するなんてできません。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
最初は気を遣っていた関係でも、時間が経つにつれて会話は変わっていきます。
これは、「性格が変わった」のではありません。
関係性が変わったのです。
つまり、コミュニケーションとは固定されたスキルではなく、「相手との距離」によって常に変化するものなのです。
本当に大事なのは「正しい言葉」ではない
さらに本書では、こんな一文が出てきます。
でも、付き合って数ヶ月から数年、結婚したりすると指摘できるようになるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
ここが、とても重要です。多くの人は、「正しいことを言えるかどうか」がコミュニケーションだと思っています。
しかし実際には、「今の距離感で、相手が受け取れる言葉は何か」のほうが重要なのです。
距離が遠い段階で踏み込みすぎると、相手は警戒します。
逆に、距離が近いのに他人行儀すぎても、不自然になります。
つまり、コミュニケーションとは、「何を言うか」だけではなく、「今、どこまで近づいているか」を感じ取る作業でもあるのです。
「誰にでも同じ態度」は、むしろ不自然
もちろん、人によって露骨に見下したり、媚びたりするのは問題です。
ですが、「誰にでも同じ距離感で接するべきだ」という考え方も、現実的ではありません。
人間関係には、必ず濃淡があります。
だからこそ大事なのは、「態度を変えないこと」ではなく、「相手との距離感を丁寧に見ること」なのです。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。





