それでも決して志を曲げなかった陸游は、中国では愛国詩人(*注1)としてのイメージが強く浸透し、小学校高学年から中学校初学年向けの国語教科書に広く掲載されています。
この詩は全八句から成りますが、教材に掲載されるのはこの四句のみです。そのため、四句の詩として認識している中国人も少なくありません。
中国の人々を励ます
四字熟語「柳暗花明」
この詩で最も有名なのは、「峰回路転」から始まる一節です。中国人の間では、まさに励ましの言葉の定番として広く知られています。あまりにも頻繁に引用されるため、すべての句を言うまでもなく、「柳暗花明」という四字熟語だけで意味が通じることがほとんどです。一般的な文章やドラマのセリフにもこの言葉はよく登場します。
実際、放送や出版の用字用語の規範となる『現代漢語詞典』(第7版)にも、「柳暗花明」という言葉がそのまま掲載されています。その説明には、陸游のこの詩に由来することが明記されており、「苦しい状況の中で、事態が好転する兆しが見え、希望を見出す」と解釈されています。
ところで、日本の辞書で「柳暗花明」を調べてみたところ、春の美しい景色という意味の他に、花柳界や遊郭を指すことがあると知り、大変驚きました。中国にも「花街柳巷」という夜の巷を指す言葉があり、確かに「柳暗花明」と字面は似ていますが、意味合いが全く異なるため、両者を関連付ける中国人はほぼいないでしょう。なぜ日本でそのような解釈が派生したのか、実に興味深いです。
諦めかけた時
現れた美しい村
山深い道をひたすら進む陸游の目に映ったのは、連なる険しい山々と、どこまでも続く曲がりくねった川でした。「もう行き止まりではないか」とさえ思ったその時、近づいてみると、なんと柳が生い茂り、花が咲き乱れる美しい村が現れたのです。
私たちも、似たような経験をしたことはないでしょうか。初めて訪れる店を探して細い路地に入り込み、まるで行き止まりかのような道を、不安な気持ちで進んでいくと、ふと角を曲がった先に目当ての店が現れる。
*注1…愛国詩人:祖国や故郷、民族への強い思いを詠んだ詩人。特に国家の危機に際して、憂いや憤りを表現した詩人を指す。







