対話で分かる地政学#9Photo:VCG/gettyimages

世界第2位の経済大国に上り詰めた中国。「陸の国」にもかかわらず、海洋に進出し、陸と海の両立を目指す。特集『対話で分かる地政学』(全14回)の#9は、地政学の“第一人者”である奥山真司氏が地政学的な観点から、覇権を目指す中国のアプローチを解説する。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希、監修/地政学・戦略学者 奥山真司)

「週刊ダイヤモンド」2023年10月21日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。登場人物は実在の専門家を除き、架空の設定です。

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中国は周辺争いが絶えず
国境固めて海洋を視野に

祖父:大屋 明(だいや・あきら)

 (好物のコロッケを食べながら)まさか米国がもはや「豊かで強い国」ではないとは。

次男:大屋 陸(りく)

 来年の米国の大統領選挙がどうなるか、すごく心配だね。

講師:奥山真司(おくやま・まさし)

奥山 おじいさん、コロッケ1個頂きますね。うん、おいしい。

母:大屋 恵(めぐみ)

 あら、奥山先生。なんだか久しぶりに感じるわ。

講師:奥山真司(おくやま・まさし)

奥山 三牧先生のお話(本特集#8『米国は「単独行動主義」に逆戻り?来年の大統領選で分断が加速も【米政治外交の専門家が解説】』)は大変勉強になったのではないですか。

 再びバトンタッチして、今度は地政学的な視点から、今や米国の最大のライバルともいえる中国について見ていきましょう。歴史を振り返ると、中国は地政学的には不利でした。

次男:大屋 陸(りく)

 日本や「巨大な島」の米国みたいに海に囲まれていないから?

講師:奥山真司(おくやま・まさし)

奥山 陸くん、するどいね。中国はアジアで最大の国土面積を誇りますが、昔から周辺の異民族との争いが絶えませんでした。

母:大屋 恵(めぐみ)

 万里の長城も異民族を防ぐ狙いでつくったのよね(陸にばっかりいい格好させないわ)。

講師:奥山真司(おくやま・まさし)

奥山 そうです。なので、周辺の国との領土争いが長く続いてきたのです。しかし、経済大国になったことや、周囲の国との国境を固めたことで、状況は変わります。戦力が外に振り向けられ、海洋に目が向けられることになったのです。