人手不足の時代、多くの経営者が「採用しなければ会社が回らない」と焦っています。しかし、運送業という人材難の業界で、人をほとんど増やさずに16年間会社を育て続けてきた経営者がいます。『雇わない経営:社員も社長も壊れないための、これからの会社設計』(きずな出版)の著者・正木孔明さんが語ったのは、「頑張る量を増やす」のではなく「設計し直す」という発想。毎朝5時55分から行っている「1分朝活」で語られたその話は、経営だけでなく家庭や人生にも通じる、普遍的な気づきに満ちていました。
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なぜ「人を雇わない」という選択が、会社も家庭も豊かにするのか
人手不足と言われる今、多くの経営者が「とにかく人を採用しなければ」と焦っています。しかし、人を増やす前にやるべきことがあります。それは、「人が幸せになる構造」に会社そのものを変えること。構造が整えば、人は自然と集まってきます。同じことは、家庭にも当てはまります。
私は『奇跡が起きる毎朝1分日記』の著者として、毎朝5時55分から「1分朝活」を無料で開催しています。心と行動を整えるための短い習慣ですが、毎週月曜日はゲスト講師をお迎えしています。今回のゲストは、『雇わない経営:社員も社長も壊れないための、これからの会社設計』の著者、正木孔明さん。運送業という、人手不足が最も深刻と言われる業界で、独自の経営哲学を実践し続けているプロフェッショナルです。
16年前に決めた、「嫌いな人間を雇わない」というルール
正木さんが最初に教えてくれたのは、会社を立て直すきっかけになった16年前の決断でした。それは「嫌いな人間を雇わない」というシンプルなルールです。
小さな会社では、好きになれない人を一人入れただけで組織全体が枯れていく。だからこそ、業界の常識を捨て、人間性を最優先にした採用に切り替えたといいます。そしてそのために、まず自分自身の人間性を上げることから始めた。経営者の在り方が変わったとき、会社も少しずつ変わっていったそうです。
二人の子どもとの出会いが教えてくれたこと
20代の終わり頃、正木さんは友人から両親を亡くした二人の子どもの支援を頼まれます。結局、二人が就職するまで、家賃から学費まで出し続けたそうです。
支え続ける中で、ある日「このままでは倒れる」と感じた瞬間があったといいます。「彼らのために稼がなければ」と覚悟を決めたとき、仕事との向き合い方が大きく変わった。稼ぐとは自己犠牲ではなく、愛をもって前に進むこと。この気づきが、後の『雇わない経営』の土台になりました。
コアに集中するための「仕事の振り分け方」
正木さんの会社では、「トラックで荷物を届けること」をコア業務と定義し、経理や点呼などはすべて外部やAI・クラウドに任せています。これまで人がやっていた朝晩の点呼も、今はロボットが担当。人は本当に集中すべき輸送業務に全力を注げるようになります。
「コアに集中すると、『この会社を選ぶ理由』が生まれるんです」
頑張る量を増やすのではなく、頑張る場所を絞り込む。そのために仕組みを設計し直す。これが正木さんの経営哲学の核心です。
仕事ではなく「人間性」を提供する
コア業務に集中し続けた結果、正木さんの会社は取引先にとって「なくてはならない存在」になっていきました。荷主側で人手が足りない瞬間、社員たちは自然に手を差し伸べるようになっていったそうです。
その結果、運賃交渉では「うちは高いけれど採用される」存在に。社員と、その家族の誕生日まで必ず覚えて声をかける――そんな小さな積み重ねが、社内外で「人間性を提供する会社」をつくっていったのです。
「頑張る」のではなく、「設計し直す」
今回の朝活で印象的だったのは、正木さんの話がすべて「頑張る量を増やす」ではなく「設計を変える」という発想で貫かれていたことです。
仕組みを見直せば、時間がもどってくる。設計をし直せば、人生そのものが変わる。経営の話でありながら、私たちの働き方や生き方にも深く通じる気づきの時間でした。








