「勉強ができるからほめるのではなく、ほめることで自己肯定感が上がり、子どもは勉強が好きになる」――進研ゼミの「赤ペン先生」全国代表である佐村俊恵さんは、こうした信念を持って、多くの子どもたちと接してきた。赤ペン先生の間で伝わる「ほめノウハウ」を使いながら、20年以上にわたり、のべ8万枚以上の答案を見続けてきたという。
この記事では、著書『57年間、9200万人の子どもを励まし続けた 赤ペン先生のほめ方』の発刊を記念して、佐村さんに話を聞いた。
(構成/藤田美菜子、ダイヤモンド社書籍編集局)

「自己肯定感が低い子」の親が言ってしまっている残念な口ぐせ・ワースト1Photo: Adobe Stock

なぜ「前も言ったよね?」は逆効果なのか

――子どものテストや宿題を見ていて、毎回同じようなミスをしているのに気づくと「前も言ったのに」「なぜ成長しないのだろう」とモヤモヤしてしまいます。こういう場合は、どのように声をかけるといいのでしょう?

佐村俊恵氏(以下、佐村) 日ごろお子さんをよく観察していらっしゃるおうちのかたほど、そうしたことに気づく機会も多いと思います。

私たち赤ペン先生も、担当している子どもたちの過去の答案はすべて履歴として残しているので、「あ、この漢字のはね、3か月連続でできていないな」というのは普通に見えてしまうんですよ。

ただ、特に低学年の子に対しては、原則として「前も間違っていたよ」「同じミスが続いているよ」という指摘はしません。なぜかというと、低学年の子にとっての「1か月前」って、大人が感じるよりもずっと昔の出来事なんですね。

子どもたちは毎日、新しいことをどんどん学んでいて、頭の中はそれで一生懸命なので、前の月に指摘された細かいミスなんて、覚えていないことのほうが多いんです。

なのに「また間違えている」と言われると、子どもの中には「ダメな子だと思われている」というネガティブな感情だけが残ってしまう。肝心の「じゃあ、どう直せばいいか」という部分が、もう入ってこなくなってしまうのです。

――では、赤ペン先生はどのように接しているのですか?

佐村 私たちは、毎月「リセット」して、心新たに答案と向き合うようにしています。

たとえ3か月連続で漢字のはねが書けていなかったとしても、毎回、まるで初めて目にした間違いであるかのように「ここははねるね」と伝えるんです。

もうひとつ大事にしているのが、間違っている箇所が複数あっても、その全部を指摘はしない、ということです。時期に応じて、「今、この子がクリアすべき課題はこれだな」というところに、焦点を絞っていきます。

低学年は「勉強が好きになる」土台をつくっている真っ最中。あえて「過去の失敗」には触れず、目の前の課題に集中してもらう。それが、結局はその子が前向きに改善に取り組むうえで、いちばん大切なことだと思っています。

なお、4年生以上になると、メタ認知能力が育ってきて過去の自分も客観視できるようになってくるので、「おしいミスが続いているよ」といったやわらかい表現で伝えることはあります。ただ、それも決して「責める」のではなく、「あと一歩だね」と背中を押す感覚です。

「反省点」より「頑張りたいこと」にフォーカス

――子ども自身に「振り返り」はさせなくていいのでしょうか?

佐村 実は、赤ペン先生は「反省」という作業にもあまり重きを置いていません。強いて言うなら、毎月のおたよりのテーマで「きみが頑張りたいこと」を書いてもらったりします。

「反省点」じゃなくて「頑張りたいこと」。今、自分が頑張っているけれど、さらに頑張りたいこと。今はまだできていないけれど、これからこうなっていきたいこと。

本来あるべき自分とのマイナスの差分ではなく、これからなりたい自分とのプラスの差分を、自分の言葉で考えてほしいと思っています。

――確かに、そのほうがポジティブな気持ちになりますね。

佐村 赤ペンのおたよりコーナーでも、年間を通して子どもたちがポジティブな気持ちになれるような問いかけをしています。「好きな食べ物は?」「好きな勉強は?」とか。逆に「嫌いなものは何?」「苦手なものは何?」という聞き方をすることはありません。赤ペンは、1か月に1回のやりとりなので、あえてそこで嫌いなものを掘り下げて、ドロンとした気持ちにさせることもないのかな、と。

冒頭の話に戻ると、「また同じミスをしている」と指摘されるのも、「嫌いなものは?」と聞かれるのも、子どもの側からすれば、ネガティブな気持ちにスイッチが入ってしまう瞬間です。

おうちのかたも赤ペン先生も、わざわざその瞬間をつくらなくてもいいのではないでしょうか。ミスはそのつどリセットし、過去ではなく未来に目を向けて「次はどうしたい?」と問いかける。その積み重ねが、子どものやる気を育むのだと思います。

(本記事は、佐村俊恵著・ベネッセ「進研ゼミ」監修『57年間、9200万人の子どもを励まし続けた 赤ペン先生のほめ方』をもとに作成しました。)