北野 武監督北野 武監督 Photo:Sipa USA/時事通信フォト

アカデミー賞は長らく「映画芸術の最高峰」と位置づけられてきた。だが、その選考をめぐっては会員構成の偏りが指摘されてきた。とりわけ2015年から2016年にかけて広がった“白すぎるオスカー”批判は、アカデミーの会員が投票する制度そのものに疑問を突きつけた。外部からの批判は、なぜ組織の改革を促したのか。その背景と経緯を明らかにする。※本稿は、松崎健夫『アカデミー賞入門』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。

“身内”をたたえるオスカー賞の
“白すぎる”偏りの構造

 アカデミー賞の投票権を持つのは“人よりもたくさんの映画を観る”映画ファンや映画評論家ではありません。また、候補となるためには興行収入の大小も関係ありません。投票権を持つのは監督、プロデューサー、俳優、撮影や編集、美術や音楽などの技術者で構成される映画芸術科学アカデミーのいわゆる“アカデミー会員”。アカデミー賞がカンヌ国際映画祭やゴールデン・グローブ賞などの映画祭や映画賞と異なるのは、映画業界人が賞を授与することで同じ業界内の“身内”をたたえるという点にあります。

 では、アカデミー会員になるにはどのような手続きがいるのでしょうか。

 俳優や監督、脚本家など19の支部に分かれている映画芸術科学アカデミーの会員数は、現在急増しています。2014年に6261名だった会員数は、2019年に8946名、2025年には1万910名にまで増えているのです。

 これは2015年と2016年の俳優部門の候補者が、2年連続で全員白人俳優だったことで“白すぎるオスカー”(#OscarsSoWhite)との批判を受け、映画芸術科学アカデミー側がA2020委員会を立ち上げた効果の表れです。会員構成や作品候補に対して多様性を反映させようと、改革に着手したのです。